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ユダヤ系ニューヨーカーの異常なグルーヴ感

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キネマ旬報WEB

配信ムービー・ピックアップ・レビューその4 「アンカット・ダイヤモンド」

数ある配信ムービーのなかから、選りすぐりの作品のレビューをお届け。映画・音楽ジャーナリスト、宇野維正氏によるオススメ第2弾は、アダム・サンドラーの強烈な演技が話題のこの1本!

古くは「黒いジャガー」(71)や「時計じかけのオレンジ」(71)や「タクシードライバー」(76)や「スカーフェイス」(83)、近年だと「ダークナイト」(08)のヒース・レジャーやウェス・アンダーソンの諸作品やテレビシリーズ『ブレイキング・バッド』(08~13)などなど。Tシャツやフーディーの絵柄になったり、ラッパーがリリックの中でキャラクターを 引用したりと、ポップカルチャーにおいてアイコン化する作品がある。ジョシュ・サフディ&ベニー・サフディの監督・脚本による本作、及びそこでアダム・ サンドラーが演じている主人公ハワードの強烈なキャラクターは、早くもそんな「ポップアイコン化した作品」の仲間入りを果たしそうな勢いで、まさに今リアルタイムで熱狂的な支持を集めている。 主人公のハワードは、強欲でギャンブル依存症でいつも異常にテンションが高い宝石商。宝飾産業は貸金業と並んで伝統的にユダヤ系が牛耳るビジネスとして知られているが、 本作がユニークなのは――例えばウディ・アレン作品などでは描かれることのなかった― そうしたストリート寄りのユダヤ系ニューヨー カー(ちなみにサフディ兄弟もアダム・サンドラーもユダヤ系家族&ニューヨークの出身)の生態を生々しく捉えているところだ。ユダヤ系の商売人と、黒人の成功したスポーツ選手やミュージシャンが、宝石や享楽的なライフスタイルを通じてわりと近い場所にいるところなど、 なんとなく知っていたその関係性の裏側がフィクションとして映像化されていて、 個人的にも目から鱗だった。 「神様なんてくそくらえ」(14) では薬物中毒者を、「グッド・タイム」(17)では逃亡中の兄弟を、物理的にも精神的にも被写体と極端に近いカメラワークで執拗に追い続け、作品に有機的なグルーヴ感を生み出してきたサフディ兄弟の、主観と客観が混濁したようなエモーショナルな作風は健在。その上で、本作では70年代アメリカ映画的なサスペンス演出やダークなユーモア感覚などの新境地の開拓にも成功していて、インィペンデント作品(北米での配給はA24) の枠をはみ出した娯楽映画にもなっている。 国によって劇場公開とネットフリックス公開の住み分けがされていたこともあり、日本では「バード・ボックス」(18) や「アイリッシュマン」(19)や「6アンダーグラウンド」(19)のような大掛かりなプロモーションはされなかったが、今後もこのようなネットフリックスでしか観られない超重要作は増えていくだろう。 文・宇野維正

『アンカット・ダイヤモンド』はNetflixにて配信中!

2019年製作・アメリカ・2時間15分 監督:ジョシュ・サフディ、ベニー・サフディ 出演:アダム・サンドラー、ラキース・スタンフィー ルド、ジュリア・フォックス、ケヴィン・ガーネット

キネマ旬報社

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