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高温ほど熱伝導率が大きくなる現象を観測 東大、窒化ケイ素薄膜で

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 東京大学の研究チームは1日、窒化ケイ素の薄膜で高温ほど熱伝導率が大きくなる現象を観測した、と発表した。熱伝導を担う格子振動(フォノン)を光と結びつけた「表面フォノンポラリトン」を用いたのが特徴。窒化ケイ素は半導体素子の絶縁膜や保護膜に使われており、今回の成果は集積化と微細化で熱がこもりやすい素子からの放熱促進に役立ちそうだ。

 従来、薄膜の表面ではフォノンが高い頻度で散乱し、熱伝導率が大幅に小さくなることが知られていた。東京大学生産技術研究所のユンフイ・ウー特任研究員と野村政宏准教授ら研究チームは、フォノンよりも速度が10万倍も速い光と結合した表面フォノンポラリトンを作り、厚さが異なる4種類の薄膜の熱伝導率を調べた。

 厚さが200ナノメートルの薄膜では、温度が高まるにつれて熱伝導率は減少。100ナノメートルの薄膜では減少傾向が鈍った。50ナノメートルと30ナノメートルの薄膜では、温度が高まるにつれて熱伝導率が大きくなり、セ氏約500度の高温で常温の約2倍になることが明らかになった。

 また、理論計算したところ、表面フォノンポラリトンは薄膜が薄いほど、また温度が高いほど大きくなった。表面フォノンポラリトンが散乱することなく進める平均距離は、フォノン単独よりもはるかに長いことが分かったという。

 産業応用されている窒化ケイ素薄膜で熱伝導率の増加が定量的に突き止められたのは初めて。野村准教授は「表面フォノンポラリトンが、薄膜で重要な熱伝導の担い手となっている確実な証拠が得られた」と話している。

 物質表面からの放熱は伝導、放射、対流という3つの機構が古くから知られている。表面フォノンポラリトンによる放熱が第4の放熱機構として確立すれば、さらなる高集積素子の開発に道を開くことになる。研究成果は9月30日(米東部時間)、科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。