NEWS・加藤シゲアキ「オルタネート」直木賞受賞ならず 尾崎世界観「母影(おもかげ)」芥川賞逃す
第164回芥川賞・直木賞の選考会が20日、東京・築地「新喜楽」で行われ、芥川賞は宇佐見りんさん(21)の「推し、燃ゆ」、直木賞は西條奈加さん(56)の「心淋し川」と決定した。芥川賞候補作となっていたロックバンド「クリープハイプ」のボーカル・ギター担当尾崎世界観(36)の「母影(おもかげ)」(「新潮」12月号)と、直木賞候補だったアイドルグループ「NEWS」の加藤シゲアキ(33)の「オルタネート」(新潮社)は受賞を逸した。 作家活動9年目を迎えた加藤の「オルタネート」は、第164回直木賞の候補6作品には残ったが、惜しくもジャニーズ史上初となる受賞は逃した。 加藤にとっては長編5冊目となる作品で、高校生限定のマッチングアプリ「オルタネート」を巡る3人の高校生の青春を描いている。「青春、恋愛はあえて描いていなかった。やったことのない挑戦だった」と明かし、芸能活動の合間に執筆してきたが、「書くために仕事を制限したことはない」と言い切る。 2012年1月に「ピンクとグレー」で作家デビュー。当初は「ジャニーズという“色眼鏡”で見られると思い、そこをどう覆らせるか」と決意して筆を執った。しかし、30歳を超え、避けてきた青春、恋愛に向き合った。 「今だからうまく書ける直感があった。また、読者を信用できるようになった。それは作家としての自信が生まれたからだと思う」 作家となり、テレビ番組の活動も“取材”の一環となった。ロケ地で発見した風景や光景を今作にも取り入れている。また、作家と芸能という二元論ではなく「歌う、踊る、演じる、トークをする。作家もたくさんある中の1つ」。すべての活動がリンクする好循環を生んでいる。積み上げてきた時間、経験、思考が今の「加藤シゲアキ」を支えている。 「オルタネート」は3人の高校生を描いているが「どれも自分に似ている」。一方で、NEWSのメンバーの性格や要素は「悔しいから入れていない」と苦笑した。直木賞の候補作品に選ばれてから仕事の現場で「おめでとう」と祝福されてきた。そこでメンバーの増田貴久(34)「ありがとう」と応える“ギャグ”も定番になったという。 グループでの活動は「チームワークでの達成感がある。それを分かち合える」と言い、小説家としては「1人でつくり責任を担うやりがいがある」。加藤は「リレーと100メートルの違いですかね」とほほ笑んだ。惜しくも直木賞は逃したが、作家兼アイドルとして大きな一歩は踏み出した。 ◆加藤シゲアキ 1987(昭和62)年7月11日生まれ、広島県生まれ、大阪府出身。本名は成亮。3人組アイドルグループ「NEWS」のメンバー。青山学院大学法学部卒。2003年、「NEWSニッポン」でCDデビュー。作詞や作曲を手掛けることもある。12年1月「ピンクとグレー」(角川書店)で小説家デビュー。13年の「閃光(せんこう)スクランブル」、14年の「Burn.―バーン―」までの3部作は“渋谷サーガ”とも称される。18年に「傘をもたない蟻たちは」を出版。6冊目の小説で直木賞候補作となった「オルタネート」(新潮社)は20年11月に発売された約3年ぶりの長編小説。
中日スポーツ