「土下座像は国際儀礼上、許されない」菅会見は“ダメ対応”の典型 新政権は韓国とこう付き合うべき
旅行者数を見ても、昨年、日本旅行のボイコット運動が起こるまで、年間約700万人以上が韓国から日本へ旅行していました。人口が約5000万人の国ですから、実に10人に1人以上。いわば国内旅行みたいな感覚で往来していた。それだけ近い関係なのです。 仮に、「北朝鮮と日本、どちらに親近感を感じますか」と世論調査で他人から聞かれたら、韓国人のメンツとして「北朝鮮です」と答えるでしょうが、これは建前で本音は「日本」です。大衆レベルというか、日常あるいは生活レベルでは日本の方がはるかに近しい。韓国では脱北者の経営する北風居酒屋より、旭日旗や日本の古いポスターが飾られている日本風の居酒屋の方が人気なのですから。
「同胞」と同じくらい意識される日本
――日本製品の不買運動は、いまでも続いていると報じられています。 確かに韓国メディアではいまだに「日本のビールの輸入量がこれだけ減った」とか「日本車の売れ行き不振」などが、これ見よがしに報じられています。ただ、目立つ動きを取り上げているだけ。実際は、今でもみんな三菱のボールペンを使っていますし、任天堂のゲームは大人気です。コロナ禍もありますが、みんな日本旅行がしたくてうずうずしています。 そもそも、韓国のメディアも「選択的不買運動」だったと総括していましたが、要するに、代替品がないものはそのまま日本製品を使っていいし、不買は目につくところだけやればいいというわけです。素朴で気楽な不買運動という感じさえしますが、もともと特定国の製品を官民挙げて政治的に大々的な不買運動を展開するなどという国は、世界のどこにもありません。韓国という国の品格を傷つけるものです。 むしろ不買運動で明らかになったのは、日本という存在が、経済的、文化的、生活的に「いかに韓国社会に浸透し根付いていたか」ということです。
韓国に対して「被害者意識」を感じはじめた日本人
――今年の夏にも田舎の植物園に安倍首相が慰安婦像の前で土下座している銅像が建てられました。どういう思いがあって、このようなことが行われているのでしょうか。 説明してきた通り、韓国では日本の存在が深く社会に浸透していますから、耳目をひくためには「日本」をテーマにするのが手っ取り早い。こうして始まるのが「反日」をまぶした愛国パフォーマンスなんです。まずは、すぐ飛びついてくるメディア向けです。反日愛国ビジネスですね。 安倍首相が土下座している銅像の話も、はじめは韓国でも大手メディアが話題にすることもなく、左派系新聞がちょっと報じた小さな出来事でした。いってみれば、山奥の植物園が国内向けに目立とうと始めたもの。日本をテーマにすれば一定の注目を集めることが出来るだろう……そんなビジネス感覚で作った。 こうした「愛国ビジネス」の動きは以前からあり、2017年8月にはソウル市内で慰安婦像を乗せたバスが走りました。これも日本では大騒ぎになりましたが、韓国でニュースになったのはその1日だけ。バス会社の社長による、売国的な愛国パフォーマンスでした。 一昔前なら、こんな話など日本に伝わらなかったかも知れない。ところが、いまネットメディアが発達したことで、韓国社会でさえ大して注目されなかったような事例が、一瞬にして日本に伝わっていく。韓国メディアも、日本からのアクセスが見込めるからと、わざわざそうした「反日」ニュースを日本語に翻訳して発信するようになりました。 こうした変化によって、今では、韓国に住む私も知らないような話題が、日本で大きく拡散され、日本人に「また韓国が悪口を言っている」「もう韓国とは付き合いたくない」という「被害者意識」が生まれている。反韓・嫌韓感情というのは「日本が韓国によって貶められている」という被害感情です。 こうした意識が日本で高まると政治家も無視できなくなり、韓国の国内消費用の愛国パフォーマンスが、日本政府の外交方針にまで影響を与えていく。 一方、韓国側からすると気楽にやっている行為ですから、まさか自分たちのせいで関係が悪化しているとも思っていない。心当たりがないので、日本の反韓・嫌韓感情は短絡的に「すべて安倍が悪い」という結論に達してしまっていた。 これまでは、韓国が日本を批判するとき、歴史を前提として「日本が加害者で、韓国は被害者だ」という固定観念がありました。それが、今や日本側にも「被害者意識」が生まれている。これまでの前提は成り立たなくなっているのに、韓国は気づいていません。この「被害感情のスレ違い」が、日韓の問題をより複雑にしています。