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加瀬亮が『SPEC』で担った重要な役割 戸田恵梨香との主役バディの魅力が軸に

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リアルサウンド

 現在再放送中の『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』(TBS系)は、スペックホルダーと呼ばれる特殊能力者たちが引き起こす事件を当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文焚流(加瀬亮)が追う異色の刑事ドラマだ。 【写真】数々の出演作が再放送された戸田恵梨香  特殊能力者を操る黒幕の存在や、スペックホルダーをめぐる争いが人類の未来を左右する壮大なストーリーに加えて、映像で再現された特殊能力の数々や随所に挿入されたパロディネタなど『SPEC』の面白さは語り尽くせないが、全編を貫く軸になっているのが、回を追うごとに深まる当麻と瀬文の関係だ。『SPEC』の魅力は主役バディの魅力と言っても過言ではなく、ヒロインの当麻とともに瀬文が重要な役割を担っている。  浅野忠信に憧れて芸能界入りし、スクリーンを中心に活動してきた加瀬が連続ドラマ2作目にして戸田とのW主演に挑んだのが『SPEC』だ。加瀬演じる瀬文は元SIT(警視庁特殊部隊)の刑事で、性格は几帳面だが情に厚い側面もあり、鞄代わりに紙袋を持ち歩いている。草食系で柔らかい雰囲気のキャラクターを演じることの多かった加瀬が、格闘シーンをはじめ、ゴリゴリの肉体派を演じるギャップが当時は新鮮だった。  水と油のような瀬文と当麻は凸凹ならぬ凸凸コンビだ。京大卒でIQ201の“変人”当麻の言動に瀬文はキレつつも、抜群の身体能力で犯人を追い詰めていく。『SPEC』での加瀬の演技は一種のリアクション芸として理解できる。戸田が繰り出す奔放なアドリブ(ボケ)に加瀬がツッコミを入れる一連のコンビネーションは日増しに進化し、『TRICK』(テレビ朝日系)、『ケイゾク』(TBS系)など堤幸彦監督が手がけるバディものの到達点となった。  漫才のような掛け合いのせいで忘れそうになるが、『SPEC』は全体がシリアスなトーンで貫かれており、主人公2人のパーソナルな感情が物語の推進力になっている。瀬文と当麻を結び付けるのはそれぞれが背負う十字架だ。両親を飛行機事故で亡くした当麻は、因縁の相手、一十一(神木隆之介)を逮捕しようとして左手を負傷。瀬文はSIT時代の部下・志村(伊藤毅)が誤射事件で重体となり、潜入捜査官だった先輩の里中(大森南朋)を目の前で殺される。いずれの事件にもスペックホルダーが関与していた。  瀬文と当麻の協力関係は、第5話で里中の病気の娘を救うため助力を求める瀬文に、当麻が「私情は禁物です。でも、はい」と応じるなど、事件を通じてより強固になっていく。第8話では瀬文が「お前と出会えてよかった。と、たまに一瞬まれに思う」と当麻に打ち明けると、当麻も「あたしは瀬文さんのこと仲間だと思ってます。(中略)絆はあったとあたしはだいぶ思ってます」と思いを伝えた。  ここまで来ると2人の間に恋愛感情が生まれてもおかしくないが、そうならないのが『SPEC』のユニークなところだ。実際、台本では恋愛を匂わせる箇所もあったというが、恋愛関係にならない男女バディという路線は最後まで維持されていた。恋人になるには瀬文と当麻は多くのものを背負いすぎており、にもかかわらず孤独を抱えた2人の支え合う姿は見るものの心を打つ。  瀬文自身がスペックホルダーではない点もポイントだ。連続ドラマの後半以降はスペックを持つゆえの悲哀というテーマも色濃くなる。スペックの存在を媒介にして出会ったバディも、互いを知り、連携を深めながら、ついにはそれぞれの存在を賭けて対峙する。シリーズの完結編『劇場版 SPEC~結』では、作品の世界観そのものを背負うことになった。まさに特殊能力の存在を前提として、バディの関係をとことん煮詰めた作品が『SPEC』なのである。  『SPEC』以降、加瀬は海外の映画作品にもより積極的に参加するようになり、演技の幅を広げている。『SPEC』のバディ経験がその一つの契機となったことは想像にかたくない。

石河コウヘイ

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