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【熊谷ドリームス】監督からの指示はなし!? 虫取りも練習!? 異色すぎる少年野球チーム

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ベースボールキング

「かなり変わったチームがある」という話を聞き取材に訪れたのは埼玉県熊谷市。直前まで雨が懸念されましたが、さすがは「日本一暑い街」。グラウンドに到着する頃には日焼け止めが欠かせないほどの日差しになり午前中で気温が30度を超えていました。そんな中で行われた“かなり変わったチーム”熊谷ドリームスの練習の様子を紹介します。 「ベストコーチングアワード」三つ星受賞チーム、八幡イーグルスの練習とは? ■何も言わなくても行動する6年生 練習は9時からスタート。まずは30人近い子ども達がネットを張ったり、倉庫から道具を出したり練習の準備を行います。準備が終わると1週300メートルほどの公園を各自のペースで走ります(高学年は2周、低学年は1周)。 続いて行われたのはドッジボール。体を大きく使って大きなボールを投げることがウォームアップの一環になるのだそうです。端から見ていると遊んでいるようにしか見えませんが、よく観察してみると6年生の子が「まだ投げてない子は?」などと低学年の子たちを気にかけ全員がボールを投げられるように調整していました。ちなみに監督とコーチは何も指示はしていません。 低学年の子達はただただ楽しんでいるようでしたが、6年生達はドッヂボールをすることの目的を理解できていることに感心してしまいました。 監督の高橋雅彦さんは言います。 「大人が『楽しくやろう』と言ってしまった時点で強制になってしまいます。大人は環境を整えるだけであとは子ども達の世界に委ねています」 この日はドッヂボールでしたが、その日によってサッカーだったりバスケットボールだったり、何をするかは子ども達が決めているのだそうです。 ドッヂボールが終わると続いて行われたのは10メートルほどのスラッグラインと跳び箱。目的は楽しみながらバランス感覚を養い、体幹や筋力を鍛えること。ここでも監督、コーチからは回数などの指示は特になく、子ども達が思い思いにトレーニングを楽しんでいました。 適宜休息を取りながら練習開始から1時間が経過。次に行われたのは15メートルほどの距離をスキップやジャンプで進むトレーニング。正面向きで進んだり、後ろ向きや横向きで進んだり、両足だったり片足だったりと多くのバリエーションがありました。これはケガをしにくい体作りや運動能力の向上を目的とした「SAQ(Speed、Agility、Quickness)トレーニング」の一環。こういったトレーニングをゴールデンエイジ期(8歳~12歳)に行うことで、神経系に働きかけてバランス、敏捷性などを活性化させる効果があるとされています。 この日、体験入部に来ていた低学年の男の子がいました。慣れない動きに悪戦苦闘していましたが、6年生の子達が寄り添い丁寧に動きを教えてあげていました。「違う!」「こうだってば!」などと否定することもなく、低学年の目線まで下りてあげて「そうそう!うまいうまい!」と上手に褒めながら教えている姿がとても印象的でした。 ここでも監督、コーチは「体験入部の子に教えてあげて」などと指示はしていません。監督に聞くと、この6年生の子達もかつて自分がそのようにして上の子達に教えてもらったのだそうです。ごく自然に教えていたのはチームの伝統に基づいた行動なのでした。 ■お茶当番もお父さんコーチも禁止! 練習時間がラスト1時間になった時点でようやくボールが登場。キャッチボールがスタートし、この日初めて野球の練習らしい光景が広がりました。 その後は紅白戦をやりたい子、スラッグラインや跳び箱をやりたい子に分かれ、子ども達は思い思いに体を動かしました。日陰で休みながら談笑する子や外野の奥で虫取りに夢中になる低学年の子もいましたが、このチームではそれもOK。何をするかは子ども達が自分で決めるのです。 紅白戦と虫取りが白熱する中、練習終了時刻の12時が近くなるとお迎えのお母さんの姿が増えてきました。 そういえば練習中、グラウンドにお母さんの姿が一人もなかったことに気づきました。それはチームとしてお茶当番を廃止していることと、子どもの自立を促すため「子どもにできることは子どもにさせる」というチームの方針が関係しているからなのかもしれません。 また、練習中はお父さんコーチの姿もありませんでした。それはチームで明確に禁止されているから。理由はお父さんがそれぞれの知識で指導してしまうとチーム方針に沿った指導ができなくなるため。チームとしてお父さんに求めるのは「できる限り手を出さず、口を出さず、見守ること」なのだそうです。 ■指示をしない監督とコーチ 3時間の練習を思い起こせば、監督とコーチは子ども達に練習の指示もほとんど出していませんでした。それは、高橋監督が目指しているのは試合に勝つことではなく「子ども達に野球を好きになってもらうこと」だから。そして、日々の練習や活動の中から子ども達が「考え」「気づき」「感じる」ことができるようになってほしい。個人としての自立、集団の中での自立ができるように成長してほしいと願っているからに他なりません。 この日の6年生たちの行動を見ているだけでも、「考え」「気づき」「感じる」ことは浸透しているように思えました。そしてそれは、今は虫取りに夢中になっている低学年の子たちにもやがて受け継がれていく姿も想像できました。 練習中の子ども達の笑顔と、練習終了後のまだ野球をやりたそうな顔が印象深い熊谷ドリームスのグラウンドでした。(取材・写真/永松欣也) *後編では高橋監督のチーム設立の経緯や子ども達への思いなどを紹介します。

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