【独占】堀口恭司が語る朝倉海とのRIZIN史上最大の大晦日リベンジ戦「あの兄弟。調子に乗っているので…」
それでも不安点は残る。前哨戦なしで復帰戦がいきなりのビッグマッチである。榊原CEOから「いきなり海戦でいいのか?」と何度も念を押されたが、堀口の選択肢は一つだった。 「ウオームアップマッチをするなら9月か11月。それではまだ早いと感じた。海君も、そんなに待てないと思う。朝倉兄弟は自分らのことしか考えていないので(笑)。俺なんかを待っていないとも思った。じゃあ、ここでやるしかないなと」 ブランクによる試合勘の欠如、リング上での反応…加えて米国から帰国する堀口は、新型コロナ対策で2週間の自主隔離をしなければならず、その間、調整は停滞する。だが、それらの不安点も堀口は一蹴した。 「心配する部分は何もない。準備を以前よりできていることは間違いないんです。自分の場合は試合で緊張しないし、いつもやっている練習が人前になるだけ。試合勘も問題はない。何度かガチスパーをやって動けているんで」 ここ2年は手術した膝だけでなく腰も含めて満身創痍の状況で満足のいく準備ができていなかった。いつも痛みというもう一つの敵と戦い続けなければならなかった。そこから解放されただけでもプラスだ。 「今の状態をパーセンテージで言えば5、60%かな。どんどん良くなっているし最終的に100%にするのは厳しいが、90何%までは持っていけますよ」 一方で朝倉海は堀口とのリベンジ戦よりも、その先の話をする機会が増えていた。米国の総合格闘技団体の最高峰「UFC」への挑戦や、もうひとつの有力団体「ベラトール」のバンタム級王者であるファン・アーチュレッタ(米国)との対戦要望である。 榊原CEOも「海はアーチュレッタを呼んでくれないかという話をしていた。でも準備が間に合っているなら堀口でいいですとも」と話していた。 ――堀口戦は眼中にないような発言にむかつきませんか? そう挑発してみたが堀口はニヤっとしただけ。 「まったく気にしていません。言っていればって(笑)」 朝倉兄弟にむかついてはいるが、その感情をリングに持ち込むつもりは毛頭ない。 「そういう感情はない。コンピューターじゃないけれどリングに持っていくのは、こうきたら、こう、こういけば、こうというような戦略だけです」 堀口もベルトを取り戻した後のことを頭に描いている。それは強者に共通したモチベーションである。 「ベラトールのベルトを取りました、返しました、ではダメでしょう。恩返しはしたい」 昨年6月にニューヨークでダリオン・コールドウェル(米国)の持つベラトールバンタム級王座に挑戦、判定で勝利した堀口はマディソンスクエアガーデンの金網の中でRIZINとベラトールの2本のベルトを掲げた。だが、このベルトも一度も防衛しないまま返上。現在のバンタム級王者は、朝倉海が対戦を熱望しているアーチュレッタである。 アーチュレッタに勝てますか?そうストレートに聞くと「まあ勝てますよね。みんなハイレベル。このクラスは、ひとつミスをすれば負ける。そういう戦いにはなりますがね」と即答した。 米国での環境も変えた。これまで米国フロリダにあるATTの練習場2階の合宿所で生活をしていたが、8月に現地に一軒家を買って“寮”を出た。億まではいかないらしいがン千万円の買い物をポンとキャッシュで購入した。プール付きでゲストルームも3つある。 「合宿所は海外から来るお金のないファイターが入るところなのに稼いでいる俺がいつまでもいたら申し訳ないじゃないですか。こっちではプール付きは当たり前なんですが、それがあるんでここにしたんです。膝のリハビリに使えるかなと」 一人暮らしには持て余すが、3つあるゲストルームはファイターへ無料の下宿として提供しているという。 ーー侍がついに一国一城の主となりましたね。また違った背負うものが出てくる? そう聞くと堀口はクビを振った。 「結婚もしていない。背負うものはない。なんだかんだ言って一人もんですからね。いつ死んでもいい。足がぶっとぼうが、捨て身でいける。家族を持つと、また違うのかもしれませんが、それが独り身の強さなんだと思うんです」 「いつ死んでもいい」の壮絶な覚悟が胸の奥にある。 ――応援してくれている人々を笑顔にするのがモチベーションでは? 「負けて周囲の人たちが悲しんだことが一番悲しかったんです。今度はみんなで笑いたい。お世話になっているATT、両親、兄弟、空手の恩師、二瓶弘宇さん(故人)の息子さん、地元で応援していただいている方々には、いい思いをしてもらいたい」 戦う理由…つまりイデオロギーを持つファイターは強い。榊原CEOによると堀口は今日6日に帰国予定となっている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)