包丁で刺した父と最期にやりとり「逃がしてくれたと思う」殺害実行した次男 伝わらなかった思い【宮城発】
殺害へ導いたジュンのメッセージ
直哉被告は2020年ごろからLINEで「JUN」というアカウントとやりとりを始めた。ジュンは霊能力者を名乗り、会ったことがない自分の周りの出来事を言い当てたことから信頼を深めていった。直哉被告が殺意を抱くきっかけを作ったのがジュンのメッセージだったとみられている。 脳梗塞を発症した敦子被告は「呪いによって症状が悪化している」として、「呪いを解くためには実母の命を奪わなければいけない」と告げられた。さらに隆一さんについても「実母を助けていて、どちらかを殺さなければ敦子被告が死んでしまう」と告げられ、直哉被告は殺害の意思を固めていく。東京にいる実母を殺すことは難しかったため、隆一さん殺害を決意し、2023年3月ごろから「人を確実に殺す方法」などをインターネットで調べていたという。
背後から襲われた父
2023年4月17日午前1時40分ごろ、隆一さんは自宅の玄関先で、背後から右腰を刺身包丁で刺され、臓器損傷による失血で死亡した。公判で直哉被告は殺害については認めたが、敦子被告との共謀は認めず、ジュンについても「助言してくれただけで殺害は自分で決意した」と証言し、単独の犯行であると強調した。 一方、敦子被告は殺害も共謀もしていないとし、敦子被告のスマートフォンから送られていたジュンのメッセージについても第三者が送った可能性があると主張。公判では敦子被告がジュンであるかどうかについて、共謀が成立かするかどうかが争われた。
ジュン=敦子被告と認定
地裁は検察側が積み上げた通信回線の利用状況やメッセージを送った同時刻にスマホのようなものを操作している敦子被告の映像などをもとに、敦子被告以外がメッセージを送信した可能性は考えられないと、ジュン=敦子被告と認定した。 また、直哉被告がジュンの言葉をもとに殺害を決意したという捜査段階の供述を変えたことに触れ、敦子被告の弁解内容を知った上で、敦子被告の関与を小さくする方向で虚偽の事実を述べたと理解するのが相当と指摘。ジュンが敦子被告であることを前提に、殺人の共謀は成立するとした。 仙台地裁の宮田祥次裁判長は、敦子被告に対し「美人局の証拠が明るみに出ることを防ぐとともに、隆一さんの退職金を得ようとしたもので悪質性が顕著」として懲役28年(求刑30年)を言い渡した。直哉被告に対しては「実行犯として計画的かつ強い殺意で犯行に及んだ」と指摘する一方で「敦子被告に利用され、思い込みで犯行に及んだことからも敦子被告ほど悪質とまではいえない」として懲役20年(求刑23年)を言い渡した。