50代共働き夫婦、年金12万円の70代母、一時預かりから「老人ホーム入居決定」でようやく安堵も〈まさかの逆戻り〉となった深刻理由
土曜日の夜に鳴ったインターフォン
「土曜日の夜、突然インターフォンが鳴るので出てみたら、姑と義妹が立っていたのです」 義妹家族と同居していた姑だったが、義妹の夫と大げんかして追い出されてしまったのだ。 「とりあえずその夜はうちに泊まってもらいましたが、私たちも仕事をしていますから、いつまでも2人を置いておくことはできませんので…」 しかし、日曜日の夜自宅に帰ったのは義妹だけ。義妹の夫が〈姑が戻るなら自分が出て行く〉と言い出したためだった。 姑は足腰が悪いわけでもなく、認知症の兆候もない。そのため、とりあえずは共働きの佐藤さんの家で〈一時預かり〉ということで過ごしてもらうことにした。 「でも、限界でした。家に帰ったら姑がいるんですよ。これまで親しく話したこともありませんから、とにかく気持ちが休まりません」 「それに、生活習慣がまったく合いません。2人だけになってから、食事も各自好きなものを勝手に食べています。洗濯も、お風呂のあと一気に回して乾燥までしておしまい。それをいちいち〈そんなのよくないわ〉と…。本当に苦痛で…」 しかし、先にキレたのは夫の方だった。 「いいからほっといてくれ!」 佐藤さん夫婦は、義妹夫婦を交えて相談し、「なるはや」で姑に老人ホームへ入居してもらうことになった。
老人ホーム入居にかかる費用とは?
老人ホーム入居にかかる費用として、まずは入居一時金が必要になる。老人ホームの家賃は「入居一時金方式」と「月払い方式」があり、前者は一定期間分の家賃をまとめて前払いし、後者は毎月定額の家賃を徴収される。前者を採用するホームのほうが多く、前払いの分、毎月かかる費用を抑えられるメリットもある。 まとまった費用が出せなければ入居は叶わない。そのため、月払い方式を用意している施設もあるが、一時金の費用はかからない分、毎月の費用は高くなる。 また入居一時金は、5~15年程度の償却期間があるのが一般的で、償却期間が終わる前にホームを退去した場合は、未償却分の入居一時金を返還してもらうことができる。通常は初期償却分として、入居と同時に償却される分があり、この部分は基本的に戻ってこない。 そして、入居後に毎月支払う月額利用料だ。内訳はホームによって異なるが「家賃」「食費」「水道」「光熱費」「管理費」「介護費」といったのが主な項目だ。また、ホームによっては日用品代やおむつ代など、日常生活費として個人で支払う費用がプラスされることもある。費用に含まれるものと含まれないものを、しっかり確認しておくことが重要だ。 「姑の年金額は月12万円。自宅の売却金額を含めた預貯金は2,500万円程度。たくさん資料を集め、みんなで手分けして費用面の条件が合うところを探しまくりました」 ちなみに、厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況和』によると、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円。また国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は5万6,428円となっている。元会社員であれば月17万円、手取りにすると月14万~15万円程度の年金が得られるようだ。 民間企業が運営する老人ホームの場合、月額費用の相場は20万~30万円と高額で、なかなか年金で賄えるところがない。ところが、奇跡的に予算内で収まる施設を発見。最初は泣いていやがった姑だったが、なんとか説得して納得してもらい、入所が決まった。 これで一安心と思ったのだが、現実は甘くなかった。