国から「誰一人、困窮では死なせない」メッセージを。作家・雨宮処凛さん
新型コロナの影響による失業者問題、年末に差し掛かり切実さを増している。支援団体による「新型コロナ災害緊急アクション」でも活動する作家の雨宮処凛さんが、政府の対策不足を指摘する。【文:雨宮処凛 編集:榊原すずみ/ハフポスト日本版】 --------------------------- 2021年の元日、私は「大人食堂」にいるはずだ。大人食堂とは、コロナで困窮した人などに食事を振る舞い、相談支援を行う場所。私も属する「新型コロナ災害緊急アクション」などの団体が集まり、大晦日には池袋で食料配布と相談会、元日と1月3日には「大人食堂」と相談会を開催するのである。 「新型コロナ災害緊急アクション」は、新型コロナウイルス感染が拡大し始めた3月、貧困問題に取り組む30以上の団体によって立ち上げられた。緊急事態宣言の出された4月に相談フォームを開設すると「ネットカフェが閉まって行き場がない」「所持金が尽きた」「家賃滞納でアパートを追い出された」などのSOSが続々と届き、現在もそれが途切れることはない。 私の2020年は、コロナ禍の困窮者支援の現場で活動し、政府や東京都などに申し入れをし、そんな現場をレポートし続けることで終わった。
人の命や生活を犠牲にし続けてきたシステムが限界を迎えた
いろんな人に会った。 コロナで仕事を失い、何日も食べていなかった人。住まいを失い、路上に座り込んでいた高齢の男性。内定を取り消された若い男性や、非正規の仕事を切られてシェアハウスを放り出された若い女性。住宅ローンが払えないという自営業の親子。勤めている風俗店の寮を追い出されそうだという女性。 共通していたのは、コロナ禍は「きっかけ」に過ぎなかったということだ。 新型ウイルスの流行は、この国の経済がとっくに崩壊していたということを、嫌というほど露呈させた。非正規雇用を増やし、彼ら彼女らを低賃金で不安定な立場に押し込み、何かあればその層を放り出す一一一。そうやって人の命や生活を犠牲にし、騙し騙しで続けてきたシステムが限界を迎えていることが、白日のもとに晒された。矛盾が一気に噴出した。 冷静に考えれば、誰だってわかる話だ。働く人の4割が非正規雇用で、将来の見通しを立てづらい。社会的信用に乏しいが故にローンなどを組むのが難しく、賃貸物件の入居審査に落ちることもあるなど居住の不安定さにも晒されている。そんな非正規雇用で働く人の平均年収は179万円(国税庁・18年)。男性は236万円。女性非正規に限ると154万円。これでは何かあった時のための貯金も難しい。実際、金融広報中央委員会の19年の調査によると、貯蓄ゼロは単身世帯で38%。