家計崩壊の危機! 食品の値上げが止まらない いちのせかつみの生活経済
日本銀行がおこなった大規模な金融緩和によって、一気に円安へと動き出し、輸入に依存している様々なモノやサービスの価格を押し上げています。 そもそも円安における値上がりのカラクリはどのようなものなのでしょうか。 例えば、為替レートが1ドル=100円だったのが120円と円安になった場合、100円で買えていた1ドルのものが、120円支払わなければ買えないことになります。企業に置き換えれば、輸入によって商品の原材料を仕入れた場合、円安によって原材料の価格が高くなり、仕入れコストの負担が大きくなります。その結果、利益が圧迫されるので販売価格に転嫁し、消費者へ実質的な値上げとして販売することになります。仕入れコスト以外にもエネルギーコストや物流コストなども増加して企業の負担はさらに拡大していきます。 販売競争が激化している中で値上げを避けたい企業は多いと思われますが、企業努力だけでは今回の円安によるコスト高を吸収することは難しいようです。
さて、どのようなものが値上がりするのでしょうか。 今年1月からカップ麺や袋麺などの即席麺は5~8%の値上げをはじめ、パスタは5~13%、家庭用食用油は8~10%、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなどの家庭用紙製品は10%以上の値上げが行われました。2月には冷凍食品やレトルト食品が3~10%の値上げ、3月から4月にかけては、アイスクリームが8~10%、牛乳が2~5%で、ヨーグルトは2~6%、そして、ケチャップは4~13%の値上げなどが行われていきます。5月に入ると、カレーやシチューなどの家庭用即席製品、ティーパックなどなど、今後も値上がりする商品は目白押しです。 なかでも政府が一元的に市場へ安定供給するとともに国内生産者を守るために有している小麦については、4月から製粉会社に販売する主要5銘柄の平均の輸入小麦価格を3%値上げします。ちなみに日本での小麦の消費量の9割は政府が輸入したもので小麦を原料とした食品などは値上げの対象となります。 この先も円安が続くようであれば値上げの影響はあらゆるものに波及していくと思われます。モノやサービスの値段が上がるインフレを積極的に促進して、長く続いたデフレ社会から脱却することが経済成長につながる起爆剤といわれてきました。しかし、円安による値上がりは、そうではありません。本来、国民全体の購買意欲が拡大し、モノやサービスが売れて品薄となり、需要が供給を上回って生じる値上がりであれば、給料も増えて景気拡大へのシナリオとなります。しかし、円安による値上がりでは景気が拡大するどころか国民の財布の紐は固くむすばれ、さらなる節約思考が蔓延していきそうです。 (文責 いちのせかつみ) ■いちのせかつみ ファイナンシャル・プランナー、生活経済ジャーナリスト。平成6年にCFP(R)資格を取得。家計からみた人生設計の考え方に関しては第一人者。レギュラー・コメンテーターとして、毎日放送、朝日放送などのテレビやラジオに出演する一方、講演会やセミナー、執筆活動など多方面で活躍中。