白紙に戻ったプロ野球開幕は5月末最有力も残る問題点…もし開幕後に”阪神ケース”が起きたらどうするのか?
オープン戦は無観客で開催できたが、大人数の選手が移動する際の感染リスク、テレビ放映されることで、スポーツバーなどにファンが集まり観戦する際、そこに「密閉」「密集」「密接」の”3密”が生まれる危険性などがあり、無観客試合の実施も難しい状況となっている。 そして仮に5月末に開幕を迎えられたとしても残る最大の問題が、「もし開幕してから阪神のように選手に感染者が出たらどうするのか?」という危険性だ。 阪神からは藤浪晋太郎、伊藤隼太、長坂拳弥という新型コロナ感染者が3人出た。その長坂の濃厚接触者となり、新型コロナと疑われる症状が出たため、PCR検査を受けた小幡竜平は「陰性」だったことが明らかになったが、開幕後に、また選手に感染者が出る可能性は否定できない。 賀来教授は「開幕後にチーム感染者が出ることはあり得る。できるだけ起こらない方がいいが、もし起きたときにどう対応すべきかを今から考えておくべきだ」と指摘した。 「たとえば、レギュラーが2人ほど感染した。ベンチ内なので、他選手への濃厚接触の可能性がある。1軍の仮に半分に陽性者が出た場合、どれくらいチーム全体を休ませるのか。相手チームとの関連もあり、日程調整をどうするのか。2軍でカバーするのかなどいろんなケースが考えられる。たとえば、巨人―阪神の3連戦で、どちらかのチームがそうなって試合ができなくなったときの対応についても考えておく必要がある」 開幕後に阪神のようにチーム内感染者が出た場合の対処方法についての明確なマニュアルが必要だと賀来教授は訴えた。感染した選手の2週間の自宅待機、濃厚接触者の隔離などの扱いだけでなく、相手チームの対応、試合の運営面での対処方法も決めておく必要がある。
NPBの斉藤惇コミッショナーも「新しいルールを作らないといけない。相手チーム、自分のチームからPCR検査で陽性が出た場合にどうなるか。選手同士は、同じダグアウトにいて接触があり、相手チームもキャッチャーはバッターの近くにいる。先生方の意見と世界の状況を見て、我々12球団で合意すべきルールを今から作っていかなくては。(その中身を)今、断定的にどうするかは言えない」と、”阪神ケース”が起きた場合の対応マニュアル策定が急務であると認識している。 そして開幕が2か月以上も再延期されることで選手の体調、メンタルの維持、管理が非常に難しくなっているという大切な問題もある。 日本体育協会のスポーツドクターを兼務している三鴨教授も「アスリートの方々は開幕或いは再開に向けて4月の終わり、5月初めに準備をして体を絞り込んでトレーニングを積んでいる。これがまた延期されるということで多大な身体的負担がかかることも危惧している」と不安視した。 全体練習のストップを決めた球団も多く、開幕に向けての練習試合をいつ再開できるかというメドもたっていない。白紙に戻ったコンディションの再調整は簡単ではなく、新型コロナの感染予防のために神経を使い、外出禁止の措置などもあって精神的にもストレスが溜まっている状況。選手が開幕後にベストパフォーマンスを発揮できるかどうかも問題点だ。 先行きがまったく見えない今季のプロ野球…。 それでも三鴨教授のメッセージが心に響く。 「我々に第3の意義が課せられたたと感じている。それは社会に対する責任。スポーツ界が社会に対する責任を果たさねばいけないのだ」 つまり、プロ野球には、新型コロナの脅威にさらされ、あらゆるイベントが自粛を余儀なくされている中、どう安全を担保してイベントを再開するのかという旗振り役と、停滞した社会のムードを打ち破る役割、新型コロナからのピークアウトを世に知らしめる役割がある。人々のストレスを解消し、勇気や安らぎを与える。スポーツ文化としての使命がプロ野球にはあるのだ。