自治体の空き家対策 コロナで地方に追い風 移住促進で地域の「お荷物」から「資源」に再生へ
人口減少が進む中、空き家の増加は深刻な社会問題になっている。景観や防犯・防災の観点から負のイメージが先行しがちだが、2015年に全面施行された空き家対策特別措置法に基づき、自治体は利活用を含めた対策に取り組む。追い風となりそうなのが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて高まった地方暮らしへの関心だ。移住者を呼び込む「地域の資源」と捉え、攻めの姿勢で空き家活用に本腰を入れる。(大貫秀美)
■理想の古民家
榛名山や子持山を望む群馬県渋川市赤城町。南雲裕一郎さん(34)=新潟県出身=一家は昨夏、築85年の養蚕農家をリフォームし、移り住んだ。転勤族でアパート暮らしだったが、古民家の雰囲気や木の温かみに引かれ、各地の物件を探すこと2年以上。小まめにチェックしていた同市の空き家バンクで、周囲の自然環境も含め理想の古民家に巡り合った。
「新築に比べて費用を抑えられるのも中古物件の良さ」と妻の美予さん(38)。はりや柱、ガラス戸はそのまま、趣のある蔵の戸は玄関の扉に使った。養蚕農家のたたずまいを残しながら心地よい住まいが完成し、「大満足。諦めずに探して良かった」とほほ笑む。
総務省が5年ごとに行う住宅・土地統計調査によると、18年の群馬県内の空き家数は15万8300戸で、13年の前回調査から8200戸増加した。住宅総数(94万9000戸)に占める割合は16.7%と過去最高を更新。全国平均(13.6%)も上回った。08~13年の増加数(2万7000戸)に比べるとぺースが鈍化しているとはいえ、依然として増加傾向にある。
■「二地域居住」推進
空き家を減らすには、管理が不十分な空き家への対処を進める一方で、資源としての利活用が有効策といえる。群馬県住宅供給公社によると、県内の24市町村が空き家バンクを運営し、所有者と利用希望者の橋渡しをしている。
新型コロナ感染拡大により、都市部の「密」を避け地方暮らしに目が向いたのは、群馬県にとって好機といえる。国土交通省は、都市住民が週末などを地方で過ごす「二地域居住」を推進するため、自治体や関係団体などによる協議会を設立する計画で、群馬県では、県と16市町村(15日時点)が参加を予定する。住居確保や就職などに関する費用補助の事例を情報交換したり、普及に向けた課題を検討したりするといい、空き家の利活用も加速が期待される。