【art】若冲はじめ皇室の名宝が目白押し。京都で初の展覧会
◆宮廷文化を彩る各時代の名品がずらり 天皇陛下の即位とともに始まった「令和」の世。この新しい時代をことほぎ、宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する名品の数々を、日本の宮廷文化とともに紹介する。皇室の名宝は別格扱いであるため、国宝や重要文化財といった文化財指定を受けることはないそうだが、もちろんその多くは、各時代を代表する名品ぞろい。本展は、これらを(意外にも!?)京都の地でまとめて公開する初めての展覧会である。 各時代を代表する名品ぞろい 書画から工芸品まで100点あまりの作品が展示されるなか、近世絵画はやはり百花繚乱。とくに地元・錦小路の青物問屋の主人から絵師となった伊藤若冲(じゃくちゅう)は、代表作《旭日鳳凰図(きょくじつほうおうず)》に加え、名高い《動植綵絵(どうしょくさいえ)》30幅のうち8幅が展示される。前者は彼が画家に専念することになった40歳の頃の記念碑的な作品だ。ほぼデビュー作であるにもかかわらず、若冲ならではの緻密で幻惑的な作風が完成されていることに驚かされる。 また絵巻では、元寇の様子を伝える《蒙古襲来絵詞(えことば)》や、春日大社の霊験を描いた《春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)》など、「これは見逃せない!」という教科書でお馴染みの作品も。そのほか、書聖・王羲之(おうぎし)をはじめとした中国や日本の能書家たちの筆跡、江戸時代、京都御所で行われた興味深い即位の風景を描いた絵など、皇室ゆかりの地・京都でこそ味わいたい作品が目白押しだ。 ーーーーー ~11月23日 京都国立博物館 平成知新館 TEL 075・525・2473 ※事前予約制 ※【前期】10月10日~11月1日/【後期】11月3~23日 ーーーーー
◆ ◆在りし日のパリを象徴する画家たち 三菱一号館美術館のコレクションの中心をなす、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックとオディロン・ルドンの作品を、「1894年」に焦点を当てて紹介する展覧会だ。 なぜこの年なのか? それは、英国人建築家ジョサイア・コンドルが、東京・丸の内に旧三菱一号館を建てたのが、1894(明治27)年だったから。当時、ロートレックはパリの街角をポスターで彩り、ルドンは《2.沼の花、悲しげな人間の顔》のような、幻想的なモノクロの版画作品を制作していた。そのルドンが初めてカラフルな作品を発表したのが1894年。同館が誇るルドンの色鮮やかな大作、《グラン・ブーケ》制作への起点の年でもある。 本展ではルドンやロートレックの作品のほか、この年一時的にタヒチからパリに戻っていたゴーガンや、19世紀末にパリで活躍した若きナビ派のメンバーなど、同時代の画家たちの作品も幅広く展示。個人的には、パリに留学していた山本芳翠(ほうすい)ら日本人画家たちがどのように紹介されるのかが楽しみだ。 ーーーーー 開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展 ~2021年1月17日 三菱一号館美術館 展示替えあり TEL 050・5541・8600(ハローダイヤル) ーーーーー ***** ◆あらゆる廃材が変身 ユニークな動物を楽しもう お菓子やジュースの空き缶をはじめ、壊れた楽器や廃棄処分となった調理器具など、廃材を集めてきては楽しい動物の立体作品をつくる富田菜摘(1986-)。名古屋市で開催される本展は、こうした動物作品と、古紙を使った人物像を合わせ、70点あまりの彼女の作品を紹介する。 金魚や、ウサギのような動物、写真の《ティラ》に代表される恐竜たち。また、工作機械のメーカー、ヤマザキマザック株式会社の工場から出た金属廃材で制作された新作のカンムリヅル《マーサ》。富田菜摘のユニークなスクラップ・ワールドは、子どもから大人まで幅広く楽しめること間違いなし! ーーーーー 富田菜摘 スクラップ・ワールド 11月13日~2021年3月14日 ヤマザキ マザック美術館 TEL 052・937・3737 ーーーーー
木谷節子