50億円を騙し取られた「HIS」会長兼社長、逆に訴訟を起こされる立場に 詐欺事件の後始末を巡り
27億円の弁済
身から出た錆が招いた結果とはいえ、弱り目に祟り目である。 海外旅行の需要はほぼ消え、頼みの綱だった「GoToトラベル」の停止で国内旅行も壊滅状態。コロナ禍に喘ぐ旅行会社の例に漏れず、「エイチ・アイ・エス」も無残な有り様だ。売り上げは激減し、今年1月までの3カ月間の決算で79億円の最終赤字に陥った。窮余の一策として、社員の2割弱に相当する千人をグループ外に一時出向させ、また、新卒採用も見送る方針を打ち出した。 業績悪化に苛まれるHISを率いるのは、かつてベンチャーの旗手として持て囃された澤田秀雄会長兼社長である。経営の傾いた「ハウステンボス」をV字回復させた再生請負人としても知られている。とはいえ、カリスマ経営者の面ばかりではなく、3年前には「詐欺被害者」として世間から関心の目が向けられた。「リクルート株詐欺」に引っ掛かり、50億円もの大金を騙し取られたからだ。結果として、澤田氏は自らが保有するHIS株を売却し、損失の穴埋めを図った。しかし、警察に訴え出ることもなく、臭いものに蓋で、欲の皮が突っ張り過ぎた果ての醜聞を隠したのだ。ところが、それでも一件落着とはならなかった。目下、澤田氏が逆に、「不当利得」の返還を求められる裁判を起こされそうなのである。
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「週刊新潮」2021年4月1日号