4年ぶりに日本企業の増益基調崩れる? 同局面にあった2008年と比較する
今回はリーマンショックほどではない その根拠とは?
もうひとつの大きな相違点として注目すべきは産業構造の変化です。日本企業はリーマン・ショック後の超円高を経験して、輸出から現地生産にビジネスモデルを転換。為替変動による収益の不確実性を排除する目的で国内の生産能力を削減する一方、海外の生産能力拡大に舵を切り、輸出せずに稼ぐモデルを構築。海外現地生産比率(内閣府調査)の上昇がそれを裏付けています。
それを踏まえたうえで、モデル転換前後の輸出動向を整理すると、以下のようになります。2007年頃まで日本の輸出は、世界経済が5%軌道で拡大する下で円安を武器に価格競争力を高めたため、著しく増加してきました。しかしながら、リーマン・ショック後の円高進行を受けて価格競争力が削がれると、輸出はシェア下落を伴って大幅に減少したので、その教訓を踏まえて日本企業は競争力の源泉を価格から品質に切り替えたほか、海外現地生産比率を高めて為替変動による収益の変動を回避した、という流れです。 これが、過去3年半の円安を経験しても輸出がほとんど増えなかったことの主背景であると同時に、今後、円高が続いたとしても輸出は持ち堪えると予想する根拠です。輸出が減ったとしても、それは海外需要見合いでの緩やかな減少に留まると予想され、日本企業のシェアが落ちる可能性は低いと考えられます。この見方が正しければ、日本株(日本企業の業績)の打撃は当時よりもマイルドになるはずでしょう。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。