定員割れの県立高「定員120人で志願者68人、倍率は0.57倍」甲子園出場校も消えていく…高校野球の厳しい現実「校名が消える前に実現した69年ぶり“最後の試合”」
「倍率は0.57倍」校名が消える
しかし、この一戦はただ単に昔を懐かしもうというロマンだけで成り立ったのではない。甲子園出場歴もある伝統校の両校だが、近隣校との統合が決まっているのだ。 新庄北は2026年4月から新庄南高校との統合が決定しており、「新庄北」ではない新しい校名になる予定だ。そして伊那北も伊那弥生ケ丘高校と統合され、2028年4月に開校予定。いずれも地域の少子化が主な原因である。 とりわけ、新庄北の生徒数減少は喫緊の問題だ。2024年度の高校入試において、普通科一般コースは定員120人に対し志願者数が68人と倍率は0.57倍なのである。 新庄北野球部もその余波を受け、部員数は現在1、2年生を合わせて12人(マネージャー含む)。今回の試合もレギュラー陣は代わる代わるランナーコーチャーを務めるなど、工夫して試合を行っていた。 かつて甲子園で対戦した高校が、少子化によってその姿を変えようとしている。当時の校名で対戦できるのは今しかない。そんな地方高校の現実が、今回の親善試合の背景に横たわっている。 「やはり、学校の形が変わってしまうのは寂しいですが、仕方ないでしょうね。その前に、甲子園の再戦を実現できてよかったですよ」 伊那北野球部OB会「薫友会」会長の新井洋一氏(82歳)は、後輩たちのプレーに目を細めながら話した。話を聞いた他のOBらも新井氏同様「寂しさはあるが仕方ない」と地域の現実を受け入れている。 そして、教育現場にいる両校監督も悲観はしていない。 「職員として働いていて、地域が変わっている現状は当然ながら感じています。OBとしては学校の形が変わるのは寂しくないと言えば嘘になります。しかし、新高校をいい未来に向かわせたいという思いのほうが強いですね。我々の地元の最上地域は、山形県の中でも一番少子高齢化が進んでいますが、今後、他の地域でも同様の高校再編は起こっていきます。我々が前向きな気持ちで、よりよく変わっていくことで、他の地域にもプラスに働くんじゃないかと考えています」(新庄北・八鍬監督)
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