「負けても負けても取材を受け続けた」DeNA初代監督・中畑清が勝てなくても貫いた信念「お客さんの入らないチームは絶対強くならないんだ」
投げ込まれるペンライトの前で挨拶した
しかし試合は中日相手に3連敗を喫し、明るいイベントとは対照的にグラウンドは暗い雰囲気に包まれる。試合後のセレモニーで場内が暗転すると、スタンドのあちこちからペンライトが投げ込まれるという事態が起こった。最後は監督、選手がグラウンドに出て挨拶で終わる予定であったものの、広島戦から続いての5連敗にファンの怒りが収まらず、現場からも急遽挨拶はなしにしたほうがいいという声まで飛び出した。イベントを続ける雰囲気ではなくなっていた。 ベイスターズは変わった、と印象づける意味でも挨拶してほしいというイベントスタッフの気持ちを尊重した中畑は、「会社の人がこれだけ頑張って満員にしてくれたんだ。全員、並ぶぞ!」と号令を掛けた。選手を連れてペンライトが投げ込まれたグラウンドに整列し、厳しい言葉を正面から受け止める中畑がいた。 あのときのことを覚えていますか?
ファンあってのプロ野球なんだから
中畑に言葉を振ると、「当たり前だよ」と頷いた。そしてこう言った。 「ファンの前に出ていって、心から謝るっていうこと。(怒りの)原因は俺たちにあるんだから、そこを自覚しないとファンとキャッチボールできないし、心から応援してもらえるチームにはなれないから。これだけみなさん怒ってんだぞって、自分たちの戒めにしなきゃいけなかった。お客さんの入らないチームは絶対に強くならない。ファンあってのプロ野球なんだから。それを俺はずっと言い続けてきたから」 中畑は4年間指揮をとり、6位、5位、5位、6位という成績に終わった。最後の年になる2015年シーズン当初、四番・筒香嘉智、ルーキー山崎康晃らの活躍もあって17年ぶりとなる首位ターンを果たし、南場オーナーからは早々に続投を要請されていたが、最終的には最下位となって、自らケジメをつける形で退任を申し出た。 最終戦は10月3日の巨人戦だった。信頼を置いてきた三浦大輔を先発させ、育ててきた筒香はこの日2本のホームランを放った。4連敗での終焉ながら、2点差まで迫った“あきらめない野球”がそこにはあった。ファンを置き去りにせず、一歩ずつはい上がろうとするチームの姿は支持を得た。成績は悪くとも、いつしかチケットの取れないスタジアムになっていた。
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