「負けても負けても取材を受け続けた」DeNA初代監督・中畑清が勝てなくても貫いた信念「お客さんの入らないチームは絶対強くならないんだ」
監督兼、広報部長兼、営業部長だった
強くすることもそうだが、2012年シーズンに就任した中畑に課せられたのは観客が集まる人気球団にしていくこと。メディアに取り上げてもらうべく、監督自らが先頭に立って新生ベイスターズをアピールした。「熱いぜ! 横浜DeNA」のスローガンも、機動力を掲げると「せこいぜ!」に。自虐的なフレーズであろうとも、目を向けてくれたらそれで良かった。 当時を懐かしそうに振り返る。 「何度も言ってきたけど、俺はベイスターズの監督であり、広報部長であり、営業部長だったから。取材の依頼は全部受けたし、負けたらしゃべらないなんて俺にはなかった。メディアじゃなくその先にいるファンのことを考えたら、負けたときのほうが監督の心理とか考えを聞きたいもんでしょ」
どんなに負けてもメディアの前に出た
初年度の成績は46勝85敗13分けで、5位の阪神に9.5ゲーム差をつけられての断トツ最下位。戦力的に見劣りしているのは明らかで、球団ワーストとなる46回連続無得点という不名誉な記録もあった。いくら負けても、いくら悔しくても、中畑はメディアの前に出てしゃべった。 この状況を変えていきたい――。 中畑の思いは、ベイスターズにかかわるすべての人の思いでもあった。選手たちには「あきらめないで戦うことができたら100敗しても構わない」と伝えていた。結果は負けであっても、食らいついていくゲームが次第に増えていた。
「勝っても払い戻し」企画への怒り
一方で球団側はIT企業らしく斬新なチケット企画やイベントを打ち出して、集客に力を注いでいく。GWには「全額返金!? アツいぜ! チケット」なる仰天企画を実施。チケット購入者が満足できなければ、負けたら最大全額、勝っても半額の払い戻しができるという実にチャレンジングなものだった。 だが、中日に12-1と爆勝しても半数以上が払い戻しをしたという事実に、中畑は球団に怒りをぶつけた。負けての返金なら納得できても、勝ってこれでは現場の士気にかかわってくる、と。どんな企画でもエブリシングOKではない。現場をリスペクトしないものは断固としてNOだった。そうでなければ全面的に協力した。試合前だろうが、イニング間だろうが、試合後だろうが、ファンが喜んでくれるなら異存はなかった。 今やベイスターズの名物企画となっている真夏の「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」シリーズ。中畑体制2年目の2013年シーズン、球団は勝負を懸ける3日間の大イベントにした。 球団初となるスペシャルユニフォーム付きチケットに始まり、ペンライトの無料配布、イニング間には山下ふ頭での打ち上げ花火、新応援歌「勇者の遺伝子」を作曲した布袋寅泰による生演奏など盛りだくさん。その効果もあって、最終日には横浜スタジアム歴代最多となる3万39人の大観衆を集めた。
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