井上尚弥の次戦有力候補だったWBO世界王者テテが衝撃KO負けで王座交代。新王者カシメロが急浮上!
衝撃の王座交代劇だ。WBO世界バンタム級王者のゾラニ・テテ(31、南アフリカ)が30日(日本時間1日)、英国バーミンガムで、同暫定王者のジョンリエル・カシメロ(30、フィリピン)と統一戦を行い、3ラウンドに2度のダウンを奪われ2分14秒TKO負けを喫した。ライトフライ級王者から階級を上げてきたカシメロは正規王座としての3階級制覇を達成。強烈なショートの右フックだった。カシメロ陣営は、WBAスーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(26、大橋)との団体統一戦を熱望している。テテが次戦の有力候補だったが、群雄割拠のバンタム戦線で井上の相手にカシメロが急浮上してきた。
井上は以前からテテの弱点を指摘していた
衝撃が走った。 3ラウンド。突っ込んできたカシメロが半身の体勢で頭を下げたテテに、アッパーとフックの間のようなショートの右のパンチを荒々しくぶちかます。テンプルに浴び、無防備になったところへもう一発ショートの右フックをお見舞いすると、テテは横を向いて、キャンバスに両手、両膝をついてダウンした。立ち上がったが、目はうつろ。ダメージが足に来てしまっていた。コーナーで2度よろけた。レフェリーはファイティングポーズがとれるかどうかを確認した上で、試合を再開させたが、ロープを背負い防戦一方。クリーンヒットは一発も当たっていなかったが、足にきているテテは、押されたようなパンチで、そのままロープ沿いによろけてうつぶせになって2度目のダウンを喫した。 なんとか立ち上がったが、ボディから、左フックを叩きこまれ、ロープとロープの間から頭が飛び出るほどの衝撃を受けたところでレフェリーが間に割って入って試合を止めた。 カシメロは雄叫びをあげ陣営に肩車されてリングを回った。 体格で上回っていたテテは1、2ラウンドとスピードに乗った左ジャブを軸に試合をコントロールしていた。だが、カシメロの破壊力の前になすすべがなかった。 井上は、以前からテテの打たれ弱さを指摘していたが、その分析通りの結果になった。 テテは右肩の故障でWBSSの準決勝のノニト・ドネア戦をキャンセル。「もう何の不安もない。順調にトレーニングが積めた」と試合前に語っていたが、1年ぶりの試合のブランクも影響したのかもしれない。 井上尚弥の次戦の有力候補として名前が挙げられ、テテ本人も「この試合に勝って井上戦を実現したい」と息巻いていたが、王座から陥落したことで、次戦の有力候補にカシメロが浮上してきた。 カシメロは、WBO、IBF世界ライトフライ級王座、IBF世界フライ級王座の2階級を獲得してきた超好戦的なボクサーで、フライ級では、4階級制覇王者の井岡一翔に判定勝ちしているアムナット・ルエンロン(タイ)にKO勝利している。この2月にはフィリピンで日本の山下賢哉(当時白井・具志堅、現JBスポーツ)をアッパーで葬った。29勝(20KO)4敗の戦績。6階級制覇王者、マニー・パッキャオ(フィリピン)と同じMPプロモーションズに所属しており、試合前には、権威ある専門誌「リング」の取材にマネージャーのジョーン・ギボンズ氏が、「井上は(ドネア戦で)欠点を露呈した。井上のディフェンスに問題があることを我々はわかっていた。彼はその弱点をオフェンスでカバーしているのだ。カシメロこそがテテよりも井上を倒すことにピッタリなのだ。カシメロは井上と勝負できる技術を持っていると信じている」とコメント。井上戦を熱望していた。 パッキャオは、最近までトップランク社と契約していた経緯があり、来年、井上の試合を2試合、米国・ラスベガスでマッチメイクするトップランク社が、KO決着必至のカシメロを次の対戦相手に指名してもなんら不思議ではない。 サウスポーのアウトボクサーのテテよりも井上にとっては、カシメロの方が、タイプ的には噛み合う相手。やるか、やられるかの激戦になることは必至だが、「ヒリヒリするような強い相手」を求める井上にとって絶好の対戦相手となりそうだ。