月収600万円でも手元にはほとんど残らない…NHK大河の舞台「日本三大遊廓・吉原」で働く花魁の"懐事情"
■吉原で遊ぶにはいくら必要だったのか さて、そんな花魁と遊ぶためには、客は揚げ代として一両二分払う必要があった。 それがどれくらいの価値になるのかということだが、じつは現代の金額に換算するのはほとんど不可能なのだ。江戸時代は260年以上続いた。同じ一両小判でも、時期によって金銀の含有量が大きく違う。また、何を換算の指標にするかでも、大きく変わってくる。たとえば、大工や職人の賃銀を例にとって考えて見よう。 江戸時代、一両(=四分)で23人の大工を一日雇えたという。いまの大工の日当は2万円ぐらいなので一両二分は70万円ちかくになる。ところが米の値段で換算すると、10万円ほどなのだ。同じ一両二分なのに70万円と10万円では、あまりにかけ離れている。それを理解してもらったうえで、米の値段に換算して話を進めていこう。 さて、初日は揚げ代として10万円を支払った。なのに、その日は花魁と床入り(性行為)することはできない。それはいくら金を積んでも無理。規則で少なくとも三度は足を運ばなくては床入りできないのだ。 ■現代のぼったくりバーも驚くチップ相場 吉原では模擬的に夫婦のちぎりを結ぶという過程をとる。男と女が出会い、親しみ、恋に落ち、性愛関係になるという手順を踏む必要があるのだ。さらに意外なことは、客が支払った揚げ代は、花魁の懐には一銭も入らないことだ。すべて店の収益になってしまうのだ。 花魁たちの収入は、床入りした際に客から貰う「床花(とこばな)」だった。これは、いまでいうチップだ。つまり、三回目からようやくお金が入ってくる。これを俗に「三会目」といい、客と馴染みになるのだ。 もちろんそれからも花魁たちは客がずっと訪れてくれるよう、あの手この手を考える。思わせぶりな言葉や別れの涙は当たり前、ラブレターもありふれた手段。場合によっては自分の体に刺青で相手の名前を刻んだり、愛している印に小指を切り落として贈ったりする。生活がかかっているので必死だ。 さて、こうして花魁がもらう床花だが、その額はなんと揚げ代の4~5倍。米の金額に換算しても一晩に40万~50万円だ。大工の手間賃換算なら280万~350万円になる。いまの高級クラブや風俗店、いやぼったくりバーでも、さすがにここまではぶん取られないだろう。ただし、明確な規定はないから、上客はもっと気前よく金を出したようだ。