ANAの長距離国際線用777、退役始まる 就航15年、同型機で国内初
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で大幅な空の需要減少が続く中、ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)は、長距離国際線に投入している大型機ボーイング777-300ER型機を初めて退役させた。国内の航空会社が同型機を退役させるのは初めて。旅客機の場合、多くの機体が就航から20年を過ぎて退役となるが、12月1日に日本を離れたANAの777-300ERの3号機(登録記号JA733A)は、就航15年で姿を消した。 ◆フランクフルト発羽田行きがラスト ANAの777-300ERは、2004年11月15日就航。「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747-400型機の後継機で、1路線目は成田-上海線だった。JA733Aが退役するまでは、ANAは28機の777-300ERを保有し、羽田や成田からロンドンやニューヨークなど欧米の長距離国政線を中心に運航していた。 国内初の777-300ERの退役機となったJA733Aは、2005年10月20日に引き渡された。2011年4月25日から約2カ月かけ、羽田の格納庫でサービスブランド「Inspiration of Japan(IOJ、インスピレーション・オブ・ジャパン)」に基づく仕様に初めて改修された機体で、座席数は4クラス250席(ファースト8席、ビジネス52席、プレミアムエコノミー24席、エコノミー166席)だった。最後の旅客便運航は、今年11月20日にフランクフルトを出発した羽田行きNH204便となった。 売却先の米国へ向かうフェリーフライトのNH9432便は、羽田の805番スポットを12月1日午前10時11分に出発。ANAのパイロットによるフライトで、アラスカ州アンカレッジを経由し、現地時間1日午前7時26分にカリフォルニア州モハーヴェ空港へ到着した。売却後の扱いは明らかになっていない。 ◆退役35機中13機 ANAHDは、新型コロナの影響を受けて事業構造改革を10月27日に発表。コスト削減の一環で、777-300ERを含む35機を今年度内に退役させることになった。35機の内訳は、777-300ERが13機(年度当初計画はゼロ)でもっとも多く、国内線用大型機777-300が2機(同)、777-200/200ERが8機(当初計画は1機)、中型機の767-300/300ERが6機(同1機)、小型機の737-700が4機(同3機)、737-500が2機(6月までに退役済み)となっている。 ANAの777-300ERは、機齢10年以上20年未満の機体がJA733Aを含めて19機あり、この中から初期導入機を中心に退役が進むとみられる。777-300ERの後継機で、来春受領予定だった次世代大型機ボーイング777-9(777X)は、2年程度導入を遅らせる。 また、ANAHDは公募増資で最大約3321億円を調達すると11月27日に発表。2000億円を発注済みのボーイング787型機の導入費用や既存機の客室改修などに充てるとしており、新型コロナ後の長距離国際線は、777-300ERから787へのダウンサイジングが進むとみられる。 新型コロナの影響で、世界的にも777-300ERの退役が前倒しになっている。GE(ゼネラル・エレクトリック)のグループ会社で航空機リースと金融を扱うGECAS(GEキャピタル・アビエーション)は、IAI(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)と777-300ERを大型貨物機に転用するプロジェクトを進めており、改修後の機体を777-300ERSFと呼んでいる。
Tadayuki YOSHIKAWA