検察解釈なら「我が国のタトゥー業は消失する」最高裁の決定全文
医師免許なく客にタトゥーを入れたとして、大阪の彫り師・増田太輝さんが医師法違反の罪に問われた裁判。 【画像】歴史に見る、カッコよ過ぎるタトゥーの写真26枚 最高裁は検察側の上告を棄却し、控訴審・大阪高裁の逆転無罪判決が確定することになった。 最高裁の決定の全文を掲載する。【BuzzFeed Japan】
平成30年(あ)第1790号 医師法違反被告事件 令和2年9月16日 第二小法廷決定 彫り師 増田太輝 上記の者に対する医師法違反事件について,平成30年11月14日大阪高等裁判所が言い渡した判決に対し,検察官から上告の申し立てがあったので,当裁判所は,次のとおり決定する。 【主文】 本件上告を棄却する。 【理由】 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,いずれも事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 なお,所論に鑑み,職権で判断する。 1 本件は,医師でない被告人が,業として,平成26年7月から平成27年3月までの間,大阪府吹田市内のタトゥーショップで,4回にわたり,3名に対し,針を取り付けた施術用具を用いて皮膚に色素を注入する医行為を行い,もって医業をなしたとして,医師法17条違反に問われた事案である。 医師法17条にいう「医業」とは,医行為を業として行うことであると解されるところ,本件では,被告人の行為の医行為該当性が争点となっている。 第1審判決は,医行為とは,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解した上で,被告人の行為は,医師が行うのでなければ皮膚障害等を生ずるおそれがあるから医行為に当たる旨判示して,被告人を罰金15万円に処した。 被告人が控訴し,医師法17条の解釈適用の誤りを主張したところ,原判決(※大阪高裁の控訴審判決)は,医行為とは,医療及び保健指導に属する行為の中で,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解した上で,被告人の行為は,医師が行うのでなければ皮膚障害等を生ずるおそれはあるが,医療及び保健指導に属する行為ではないから,医行為に当たらない旨判示して,刑訴法397条1項,380条により第1審判決を破棄し,無罪を言い渡した。 2 所論(※検察側の上告趣意)は,医療及び保健指導に属する行為か否かを問わず,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為であれば,医行為に当たると解すべきであり,被告人の行為は医行為に当たるから,原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,これを破棄しなければ著しく正義に反する旨主張する。 3 そこで検討すると,上記原判断(※高裁の無罪判決)は正当なものとして是認することができる。その理由は,次のとおりである。