最高級車センチュリーに自腹で乗る人々 オフ会に潜入、オーナーに聞いた公用車問題と「ふさわしい人」論
「センチュリーに知事が乗るのはけしからん!」と今秋、にわかに全国で巻き起こった公用車論争。このVIP御用達の最高級車をマイカーとして所有する、巷のセンチュリーオーナーたちは何を思うのか? 夜な夜な開かれるオフ会に潜入して聞いてみた。トヨタ・センチュリーに乗る歓びとは?(北林慎也) 【写真】貴重なV8初期型・2代目ロングボディー・4本アンテナ警護車仕様…生活感あふれるマイカーも
近寄りがたい駐車ゾーン
11月のとある週末、圏央道外回りの厚木PA。 午後8時ぐらいから、トヨタ・センチュリーが一台、また一台と、音も無く静かに入ってくる。 高架下の一角に集まった、センチュリーばかりおよそ20台。オーナーズクラブ「鳳凰(ほうおう)倶楽部」の定例オフ会の始まりだ。 センチュリーだけが並ぶ駐車スペースは異様だが、どこか威容も醸している。 見た目はフルノーマルの車両がほとんど。気合の入ったカスタム仕様も何台かあるが、ベタベタのシャコタンはおらず、下品さは感じない。 ただやはり、気安く近寄りがたい雰囲気のゾーンではある。 少なくとも、ここに後から横付けで停める休憩ドライバーは見当たらない。 やや緊張しながら遠巻きに眺めていた記者に気づいて、代表の川原弘幸さん(53)が声をかけてくれた。 怖い人ではないようでホッとする。
交通ルールをきちんと守る
鳳凰倶楽部は、神奈川県内で中古車販売業を営む川原さんが2011年に立ち上げた。 関東と北海道、東海にそれぞれ支部があり、会員の所有するセンチュリーは合わせて50台近くにのぼる。 川原さん自身もマイカーとしてセンチュリーを30年近く乗り継ぎ、現在は6台目。 ボディーカラーは、お気に入りの水色メタリック「瑞雲」だ。 中古車市場でのタマ数はけっして多くないが、官公庁の払い下げなどで一定数が出回っている。 長く使われたハイヤー上がりなどは低年式の過走行車が多いが、こまめにメンテナンスされ丁寧に扱われるため、程度の良い個体が大半だ。 会員はサラリーマンに会社役員、主婦……とさまざま。20代の若者もいる。 ずっと乗り続けている人が多く、50万キロ近く乗り続ける個人タクシー運転手もいるという。 いかつくてカッコイイから、と安易な気持ちで購入する「オラついた輩」も世間にはいるが、たいがいはすぐに飽きて手放してしまうため、入会には至らないという。 整備工場などでは、厳格な身分証明を求められることもある。「反社会的勢力」と誤解されないように神経を遣う。 公道では徹底して交通ルールを守り、ジェントルに走るよう会員に呼びかけている。