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フランソワ・オゾン、実際の事件題材に問題提起「性的虐待被害者を時限爆弾のように描いた」

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映画.com

 フランスで実際に起こった神父による児童への性的虐待事件を描き、第69回ベルリン国際映画祭で審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞した、フランソワ・オゾン監督の「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」が、7月17日公開される。オゾン監督は、これまでのスタイリッシュな映像表現や、ウィットに富んだストーリーテリングを今作では封印。スキャンダラスな表現ではなく、被害者の心情に寄り添いながら、繰り返されてはならない権力者による罪を真摯に告発する。オゾン監督が、映画.comの取材に応じた。 「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」予告編 --児童への性的虐待事件は、近年数多く報道されています。劇映画としてこのような事件を扱った理由を教えてください。  私は、教会における児童への性的虐待に関心を持ったのではなく、今日の社会において、言葉の解放がどのように力を生み、驚くべき影響力を持つのかということに惹かれたのです。(被害者である)アレクサンドル、フランソワ、エマニュエの闘いについて知った時、これは力強く、人の心を揺り動かす映画、全ての闘いは政治的で集団のものであると示す映画を作れると考えたのです。 --被害者たちに映画化企画について了承を得るのに困難はありましたか? また反対に、教会側からの抵抗などは?  当初はドキュメンタリーにしようと思っていました。でも被害者たちはすでに何度も新聞やテレビで証言を繰り返していたんです。彼らが私の取材を受けてくれたのは、私がフィクションの映画監督だからで、映画を通じて彼らの伝えたいことがより力を持てるだろうと知っていたからです。これは苦しめられてきた問題から次の一歩を踏み出す一つの方法でもあったと思います。教会に許可を求めるようなことは一切しませんでした。こっそり映画を撮影したんですよ。でも司祭と枢機卿に関するすべてのことは事実に基づいていて、何も作り変えていません。 --フィクションとして盛り込んだエピソードはあるのでしょうか。  すべてが真実です。でも時に簡略したり、幾人かに関しては彼らを守るために被害者の家族の名前を変えたりはしました。 --被害者のPTSDや、成人してからの人生の困難さなどデリケートな問題を扱っています。それらを表現するにあたって気を付けたことを教えてください。  私が重要視したのは、被害を受けた子ども達一人一人が、家族にも影響を与える時限爆弾のように描くことでした。親は多くのケースで罪悪感を感じています。兄弟姉妹たち、恋人たち、友達、(被害者が後に持った)子どもたちにも影響は及んでいます。お伝えしておきますが、ヨーロッパでは5人に1人の子どもが性的虐待を受けており、そのうち80パーセントが家庭内で被害に遭っているのです。 --被害者を演じたメルビル・プポー、スワン・アルロー、ドゥニ・メノーシェが3人揃ってセザール賞にノミネートされ、アルローが助演男優賞を獲得しました。リアルな心情を体現した彼らは、実際の被害者たちに綿密な取材をしたのでしょうか。  俳優たちは、撮影前に被害者に会ってはいません。彼らは映画の登場人物を演じるようにそれぞれの役に取りかかりました。でも自分たちが演じる人物が存在すると知っていたので、大きな責任を感じていました。被害者たち、それから被害者たちの闘いに背くようなことはしたくなかったのです。プレミア上映で被害者たちと対面し、感動していましたよ。

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