最上川氾濫 水が引き…被害あらわ “粉吹いた球体”転がる 山形県の尾花沢スイカ
全国有数のスイカ産地、山形県。4日前までは、尾花沢スイカの鮮やかなしま模様が整然と畑に並んでいたが、氾濫した最上川の濁流が押し寄せ、畑が冠水した。30日、やっと水が引いた畑に農家が足を踏み入れると、そこには茶色に粉吹いた球体が転がっていた。 大石田町の芳賀哲雄さん(70)は1ヘクタールのスイカ2000株が被害に遭った。収穫1日前だった。「全滅。手間暇かけて育てたのに、悔しい」とこぶしを握る。28日夜から避難したが、畑が心配で1時間ごとに見に来た。午前2時に畑が冠水しているのを見て「場所を間違えたかと思うほど変わり果てていた」。予想を超える水位に、膝から崩れ落ちた。スイカに関わり半世紀、初めての体験だという。 ハウスの骨は折れ、ビニールは破けた。農機も浸水。片付けは1カ月以上かかる見通しだ。病虫害発生の恐れがあるため早急に作業を進めたいが、30日は気温30度近くに上り、じりじりと肌を焼いた。泥は乾いて固まり、思うように進まない。 芳賀さんは畑の一部でオーナー制度を取り入れ、会員は地元から県外まで幅広い。被害を聞き、手伝いに来た人もいた。厳しい状況ながらも「来年に向け、畑の復旧を目指す」と前を向く。
果樹、水稲も打撃 JAさがえ西村山
JAさがえ西村山管内では、農業関係に大きな被害が出た。JAや県、管内1市4町などは30日、水田や果樹園を巡回し、被害状況の把握に努めた。 寒河江市西根の日田地区では28日の雨で内川があふれ、サクランボ園や野菜畑が浸水。同市平塩地区では最上川が氾濫し、果樹園や野菜畑の他、水田約1・2ヘクタールが濁流にのまれ、出穂期を控えた水稲が倒伏した。 大江町荻野地区では月布川の氾濫で、西洋梨やリンゴといった果樹園やトマトハウスなど5ヘクタール以上が水に漬かり、スイカ畑も濁流にのまれた。朝日町大暮山地区では特産のリンゴ畑が幅20メートルほど崩落し、河北町溝延地区ではサクランボ園や特産のエダマメ「秘伝」の畑などが浸水した。 寒河江市平塩で稲作を営む男性(66)は「最上川の氾濫で水田4・5ヘクタールのうち1・2ヘクタールが濁流にのまれた。今年は生育が順調で期待していた。もう元の状態に戻すことは困難。諦めるしかない」と肩を落とした。
日本農業新聞