多額の債務超過 横浜F・マリノスがJから消える?
単年度赤字を解消するには(1)スポンサー料を増やす(2)入場料収入を増やす(3)人件費を削る――のいずれかの手段を講じるしかない。場合によっては、中村らの高年俸選手を放出するケースもありうるだろう。債務超過から脱却するには、もはや親会社の日産自動車による増資しか選択肢は残されていないだろう。 大河本部長は「人件費を削るのは夢がない、という話になっているからこの赤字になっている」と推察した上でこう続ける。 「(中村)俊輔や中澤を抱えるチームに価値があると思うスポンサーが現れるかどうか。入場料収入を増やすなら、平均で3万人台という高いレベルを維持していかないといけない。日産自動車自体にお金がないわけではない。極端なことを言えば(横浜FMが)なくなる選択肢はゼロではないが、消滅が何を意味するかはゴーン社長もさすがに理解されていると聞いている。今後は親会社との話し合い次第であり、Jリーグがどうのこうのと関与する話しではないと考えています」 開幕から上位につけるなど好調を維持する今シーズンだが、平均入場者数は2万4275人と昨シーズンから微増にとどまっている。横浜FMの苦悩は続く。 ■もっとも成功を収めているのはヴァンフォーレ甲府 意外に思われるかもしれないが、経営面でもっとも成功を収めているのはヴァンフォーレ甲府となる。代表取締役会長を務める海野一幸氏が社長に就任した2001年以来、12年連続で単年度黒字を計上。内部留保も2億9200万円に達した。 特定の親会社を持たない市民クラブで、山梨県内には巨大なマーケットもない。そうした状況下で、かつては「Jのお荷物」と揶揄されたクラブが健全経営を貫けるのはなぜなのか。大河本部長は「何かひとつと言われると、やはり経営者だと思います」とこう続ける。 「海野さんは山梨県内の黒字企業で、かつ広告への出稿価値を求めている企業をくまなく回り、まずは収入を増やすことに最大の努力を積んできた。入場者数が多少は落ち込んでも、ここまでは収入を確保できるということを念頭に置いた上で選手人件費などの経費を固めている。絶対に赤字にはならない仕組みができあがっているんです」 チームスポンサーの数は軽く700社を超え、広告料収入も5億5400万円に達した。市民クラブの中では抜きんでた数字だ。ホームの山梨中銀スタジアムは、ピッチの周囲にスポンサーボードがひしめくように並ぶ。サッカー専用スタジアムではないが、海野社長は「陸上のトラックがあるおかげでスポンサーボードをたくさん並べられる」と逆に歓迎する。走り幅跳び用の砂場を覆うビニール製のカバーにまで、スポンサーのロゴがついているほどだ。 試合用ユニホームには胸、背中、袖、パンツの4か所にしかスポンサーのロゴを出せないが、すべて埋まっても営業をかけ続ける。今では規制のない練習ウェアに、所狭しとロゴが並んでいる。 お金は足で稼げとばかりに、チームと地元への愛情を武器にスポンサーを獲得し続ける姿勢に、2009年シーズンからJ2に参入しているファジアーノ岡山の木村正明社長も追随。2012年度は2600万円の黒字に転じさせた。大河本部長は言う。