「後継者難」倒産、過去最多ペース 今年度はすでに全国で289件発生
社長の死亡が最多 前年比17.5%増と急増
2020年度(20年4月‐21年3月)の『後継者難』倒産は、1月までの10カ月間で289件(前年同期比15.6%増、前年同期250件)に達した。すでに2015年度の287件を上回り、調査を開始した2013年度以降で年度最多の2019年度(319件)を超えることがほぼ確実になった。 コロナ禍のなか、2020年の休廃業・解散は過去最多の4万9698件発生し、中小企業の事業承継や後継者問題が経営上の大きな課題になっている。 2019年の代表者の平均年齢は62.16歳(前年61.73歳)で、高齢化が進んでいる。経営不振の企業では同族継承や後継者育成が進まず、事業承継まで手が回らないのが実状だ。このため、代表者の「死亡」や「体調不良」などの健康問題で、倒産や廃業に至るケースが増えている。 2020年4月から2021年1月まで10カ月間の『後継者難』倒産289件のうち、代表者の死亡は134件(前年同期比17.5%増)、体調不良は107件(同22.9%増)と、この2要因で241件(同19.9%増)を数え、『後継者難』倒産の8割以上(構成比83.3%)を占めた。 産業別では、最多が建設業の63件(前年同期比31.2%増)。次いで、サービス業他62件(同3.3%増)、卸売業50件(同19.0%増)と続く。 コロナ禍の収束が見えないなか、中小企業の「社長不足」は深刻さを増しており、後継者難が倒産や廃業の後押し圧力を強めている。 ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2020年度(2020年4月-2021年1月)の「後継者難」倒産を抽出し、分析した。 ◇2020年度(4-1月)の『後継者難』倒産が289件 2020年度の『後継者難』倒産は、1月までの10カ月間で289件(前年同期比15.6%増)に達した。このペースをたどると年度最多の2019年度(319件)を超えることが、ほぼ確実になった。 新型コロナ感染拡大に伴う政府の資金繰り支援策で企業倒産は抑制され、2020年4月-2021年 1月の10カ月で6083件(前年同期比15.9%減、前年同期7240件)と大幅に減少している。 だが、同期間の『後継者難』倒産は289件(前年同期比15.6%増、前年同期250件)と増加し、全倒産に占める構成比も4.7%(前年同期3.4%)と拡大している。 金融機関は企業の将来性を判断する「事業性評価」に基づく貸出が浸透し、後継者の有無は大きな要素の一つになっている。 中小企業の代表者の多くは、高齢で経験が長いほど経理や営業、人事など、あらゆる業務を担っている。特に、資金調達などへの依存度が高く、代表者の病気や体調不良で経営に支障が生じた場合、事業継続に大きな経営リスクになっている。