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自他をより深く理解し、愛すためにできること。井原信次、松下まり子、森栄喜、ヨーガン・アクセルバルによる展覧会が開催へ

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美術手帖

 東京・新宿のKEN NAKAHASHIで、同ギャラリーの所属作家4名によるグループ展「one’s behavior」が開催される。参加作家は、アートを通じて自己と他者の距離を近づけることを試みる井原信次、松下まり子、森栄喜、ヨーガン・アクセルバル。この4名が、ドローイングや写真作品とともに、日々の思考の軌跡で紡ぎ出した散文、詩、物語などの言葉を張り巡らされた関係性の網目としてギャラリー空間で同時に抱え込み、複数の個が持つ独自の意識や声によるポリフォニーを発生させることを試みる。  展覧会タイトルにもなっている「one’s behavior」には、自他を理解し愛そうとする姿勢や精神をも標榜し、何層にも重ねられた思いやコミュニケーションの熱の源泉となる瞬間毎の振る舞いといった意味が込められる。会期は1月14日~2月29日。  井原は、社会やコミュニティーから感じる孤独感を作品制作の根源として、アートを通じて自己と他者の距離を近づけてきた。2018年に同ギャラリーで開催した個展では、SNS上でつながり交換した画像や言葉のやりとりをもとに、実際の名前も住んでいる場所も知らない人たちを描いた「MEYOU」シリーズを発表。同展を終えると井原は世界各地を巡り、近年はこの旅を通して出会った人についての回想文、紙袋などに描いたドローイング、記録写真など「些細なもの」を組み合わせた「Love Your Neighbor」シリーズに取り組んでいる。本展では、同シリーズより一部をプロローグとして披露するという。  性愛や生きる痛み、自然/原我との対話、各地の神や死生観に関心を持つ松下も、各地への旅を続けながら人間という生き物について考え、恐怖と奇妙さを感じつつも可能であれば接点を持ちたいと思って描いたドローイングや、ふわふわと浮遊するような思念を書き綴った言葉のメモを残している。本展では、日記のように日々の感情や記憶を反映し変化し続ける作品のなかから、穏やかな時期のドローイングが展示される。 ​ 森は、真っ赤に染められた家族をテーマとした「Family Regained」シリーズから出発した「拡大家族」とコントラストをなす「個の肖像」を象徴する未発表のモノクロ写真より3点を発表。「Family Regained」は、森自身が親しくしている身近な共同体を多様な家族形態やセクシュアリティーの実例として、自身の写真に取り込み、関わりを派生させようとした作品だが、「個の肖像」では、物理的にも心理的にも家族の外にありながら、撮影者である森と被写体との間にこぼれ落ちてくる愛情や、交錯する声を滲み出す表現を行う。同作は、社会の中の家族の一員としての規範や役割を意識もせず、背負いもせず、まっさらな個として存在している意識や強さ、孤独、そして個であるが故に他者に馳せられる愛おしさの表象でもある。  アクセルバルは、主に剥離式のピールアパートタイプと呼ばれるポラロイドを使い、ソフトフォーカスで撮影を行う写真家だ。ライフワークとして制作する青年と花の写真シリーズや、近年執筆し始めた物語からは、自己や他者をよりよく知り、より深く理解し、より多く愛そうとする「隣人愛」の精神を見出すことができる。またアクセルバルは、自身がゲイであることをオープンにしていく移行段階で、自身の幼少期から青年期に一旦何が起こったのかを回想し、受け入れ、自分の写真がどこに向かっていくのかを、よりよく理解することに努めてきた。本展では、友人や花を被写体にした新しい写真作品2点と、19年11月に発表した短編物語『And I reminisce』の続編の始まりとなる小さな物語を発表する。

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