遺骨放置、守り手なし…どうする「無縁墓」 撤去費用は自治体負担 財政支援なく対応手探り、億単位の支出も〈かごしま墓事情㊦〉
鹿児島県内で、墓や納骨堂に納めた遺骨を移動する改葬が増えている。厚生労働省によると、県全体の2022年度の改葬許可数は4502件で、20年度の3204件から4割増えた。一方、自治体は管理する人がいない「無縁墓」の対応に頭を悩ませる。国は少子高齢化や核家族化で増加するとみて解消を進める方針だが、財政支援や撤去のルールもない中、自治体が手探りで進めているのが実情だ。 〈かごしま墓事情㊤〉増える墓じまい 「管理困難」改葬申請相次ぐ、納骨堂の新設機に5倍の自治体も 花を絶やさず熱心に守ってきた鹿児島も「例外ではない」
鹿児島市は2004~19年度で1874基を撤去し、遺骨を納骨堂に収容した。墓地埋葬法で無縁墓に所有者や縁故者がいないことを確認するため、立て札や官報で周知するよう規定されており、同市では着手から撤去まで最短でも2年を要する。最終年度の経費は1848万円。全体では億単位の費用を自前でまかなったという。 市は今年2月、星ケ峯墓園に最大3000柱を収容できる合葬墓を開設した。無縁墓を生まないよう、継承者がいない市営墓地の利用者や経済的に墓が持てない人などの受け皿を想定した。5月末現在で114柱を納めた。担当者は「今後も無縁墓が増えれば、財源や人手の負担は計り知れない」と語る。 奄美市は10年度から、集落が運営する共同墓地に対し、無縁墓の遺骨を移す納骨堂の建設費として100万円を上限に補助を出す。担当する環境対策課は「無縁墓の処遇は市民も関心を寄せている。国の財政的な支えが必要」と話す。
総務省の調査によると、公営墓地を持つ全国765市町村のうち16~20年度に無縁墓解消を進めた自治体はわずか6%だった。県内のある自治体の担当者は「解消すべきとは思うが人手不足で手が回らない。草刈りなど最低限の処理で手いっぱい」と明かす。 公営墓地に限らない。県内の墓地・納骨堂は22年度で1万704カ所あり、大半は自治会や住民組合が運営する共同墓地とみられる。別の市の担当者は「共同墓地の代替わりが進むにつれ、利用者の実態がつかめなくなっている」と嘆く。
南日本新聞 | 鹿児島