パパも休み取りやすく、関連制度施行から1年でじわり変化
(ブルームバーグ): 新制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」の施行から1年がたち、男性が育児に向き合える環境が整ってきた。男性の育休日数が前の年から2倍超に増加したとの調査結果もある。政府の要請や社会的機運の高まりに背中を押され、企業の姿勢に変化が表れ始めている。
積水ハウスが2019年から実施する調査の23年版によると、男性が育休を取得した日数は平均23.4日となり過去最高だった。19年に2.4日だった取得日数は一気に増え、取得率も24.4%と前の年から大きく伸びた。同調査では小学生以下の子どもと同居する男女9400人を対象にアンケートを実施した。
背景の一つに挙げられるのは、産後パパ育休をはじめとする政府の取り組みの成果だ。育児・介護休業法の改正を受け、昨年10月から従来の育休に加えて男性が子どもの出生日から8週間以内に最長4週間の育休を取れるようになった。今年4月には従業員1000人以上の企業に男性の育休取得率の開示が義務付けられ、社会的にも男性の育児参画を後押しする機運が生まれた。
実は日本の育休制度は諸外国と比較してもともと手厚い。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、22年に父親に認められた有給の育休期間は日本が52週間と2番目に長かった。米国(0日)はもとより加盟国の平均(10.4日)を大きく上回る。ただ利用をためらう男性が少なくなく、制度を生かし切れていなかった面があった。
「従業員が社会の変化や会社の前向きな姿勢を実感し、取っていいんだと思うようになってきた」。育休についてこう話すのは、日立製作所のグローバルダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン本部の松本明希子主任だ。同社は昨年度から子どもが生まれる従業員を対象に、育児や関連制度を紹介するセミナーを始めたほか、育休取得時の所得をシミュレーションできるツールの提供を始めた。
育休取得推進に取り組む動きは、着実に企業の間に広がり始めている。三井住友銀行は4月、子どもが2歳になるまでの育児目的の休業取得期間を従来の2倍となる20日に拡大した。人事部の河渕千紗ダイバーシティ推進室長は「1日だけの休みで取得率100%では意味がないという課題意識が経営側からも上がった」と話す。