生きることに疲れた人が「手放すべき考え」とは?
「自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、クリープハイプ・尾崎世界観氏も推薦する『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。この記事では、著者の齋藤真行氏に教えてもらった「ネガティブな気持ちを解消する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬) ● ストレスの原因になる「直線的な考え方」 目標や目的について「直線的に考えすぎる」ことが、ストレスや挫折を招くことがあります。 目標をどう達成するかという課題に向き合うとき、気をつけなければならない考え方です。 「直線的な考え方」とはどのようなものなのでしょうか。 ショッピングモールでの経験を例として考えてみます。 「直線的な思考」の人は自分が買いたいものを具体的に決めて、最短ルートで効率よく買い物を済ませたいと考えます。 直線的に売り場まで行き、買い終わったら帰ります。 目的達成のためのルートから外れるような行動にはストレスを感じます。 一緒にいる家族や友人が、ただぶらぶらとウィンドウショッピングを楽しみたいということであるなら、買い物をするのがつらい時間になってしまいます。 目的達成に向けて一直線に進もうとする「直線的な思考」が、他の人々のペースや価値観との不一致を引き起こし、思い通りに進めないので疲れてしまうのです。 これは、日常の多くの場面にも当てはめることができます。 高速道路での長距離運転も良い例です。 目的地に着くことだけを考え、「早く到着したいのに…」「目的地までまだ~キロもある…」など考えながらアクセルを踏み続けると、だんだんとストレスが強くなり、消耗してしまいます。 しかし、目的地を一旦忘れ、「今この瞬間の風景を楽しもう」「今いるこの場所を走ることに集中しよう」といった考え方に切り替えると、不思議と気持ちが楽になり、耐えるのもつらくなくなり、気づいたら目的地に近づいています。 ● 目標をいったん忘れてみる こうした経験から得られる教訓は、「目標を直線的に追い求めすぎない」「目の前の現実を一瞬一瞬楽しむという視点を取り入れる」ということです。 ゴールまでの道のりが長く、一気に進むことが難しい場合ほど、目標をいったん忘れて「目の前の一歩」に集中することが有効です。 掃除をするという場合、散らかった部屋全体を見渡して「これ全部やらなきゃ」と思うと、きつい作業を予感して、嫌になってしまうことがあります。 しかし、「とりあえず目の前にあるゴミを1個捨てよう」といった小さな行動から始めれば、その行動が「ではこれをするか」と次につながり、最終的には部屋全体が片付くようになります。 小さな達成感を積み重ねることで、結果的に大きな目標に近づくことができます。 直線的な考え方の問題点は、特に「壁にぶつかったとき」に現れます。 直線的に突き進むスタイルでは、計画通りに進まない場面で「なぜできないのか」「どうしてダメなんだ」と自分や他人を責め、過剰なストレスを抱えやすくなります。 しかし、曲線的な思考や柔軟なアプローチでは、「ここは一旦休んで、違うルートからアプローチしてみよう」「少し時間を置いてからまた取り組もう」「とりあえずこの一個だけやればいいや」と、ゆとりをもって考えることができます。 壁にぶつかったときの対処法が柔軟であるほど、精神的な負担が軽減され、結果的に長期的な成功につながる可能性が高まります。 ● 「回り道」でも今を楽しみながら進む より有能な人間と認められるために、「達成する目標は大きくなければならない」「それも最短で達成しなければならない」というプレッシャーを私たちは感じがちです。 しかし、それは多くの場合現実的ではなく、かえって挫折感を生む原因となります。 現実的なアプローチとして、「目標はあくまで方向を示すもの」と捉え、それに向かって「一歩一歩進んでいく過程をどのように楽しむことができるか」が大切です。 目標を設定することはもちろん大切ですが、それに囚われすぎず、途中のプロセスを柔軟にしてゆとりを持つよう工夫することで、ストレスを減らし、最終的な達成感をより豊かなものにすることができます。 これは仕事や家事、趣味、日々の生活の多くの場面に応用できる考え方です。 「足元の一歩」を大切にしながら、ゆっくりと進む。 「回り道」してでも今を楽しみつつ進む。 それが長期的な成功への鍵ではないでしょうか。 (本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の著者、齋藤真行氏が特別に書き下ろしたものです)
齋藤真行/さいとう れい