中国、邦人の短期ビザ免除措置30日再開 観光で景気浮揚狙い
【北京・伊藤完司】中国外務省は22日、新型コロナウイルス禍で停止していた日本人に対する短期滞在ビザの免除措置を30日から再開すると発表した。来年末までの措置で、もともと「15日以内」だった滞在可能期間を「30日以内」に延長した。深刻な不況が続く中、日中間の貿易や経済交流を促進し、日本人観光客を呼び込むことで経済を活性化する狙いがあるようだ。 今回、短期ビザ免除の対象となったのは日本やブルガリア、ルーマニアなど計9カ国。中国外務省の林剣副報道局長は22日の記者会見で「外国との人的交流を促進するため短期ビザ免除国の範囲を拡大する」と述べた。対中強硬姿勢を鮮明にするトランプ次期米大統領の就任前に、日本を含む諸外国との関係を少しでも改善させたい思惑も透ける。 石破茂首相は15日、中国の習近平国家主席とペルーで初会談し、日中の共通利益を拡大する「戦略的互恵関係」の推進を確認したばかり。石破氏は22日、官邸で記者団に「両国間の交流が一層、盛んになることを期待する」と述べた。 中国の日系企業で組織する中国日本商会も22日の声明で「日中両国の経済交流強化に不可欠な人的往来の活性化につながることを強く期待する」と歓迎した。 中国の旅行業界では日本からの観光客に期待する声が根強い。ただ中国当局によるスパイ容疑での邦人拘束、日本人の襲撃事件、無差別の殺傷事件が相次いで発生しており、日本からの訪中客が順調に回復するかどうかは不透明だ。 中国政府は観光や出張で15日以内の短期滞在をする日本人向けにビザを免除していたが、新型コロナの流行を受けて2020年3月に停止。コロナ収束後、東南アジアや欧州などの約30カ国をビザ免除の対象にしたが、日本には「対等な措置」を取るように求め、再開していなかった。日本はコロナ以前から中国人へのビザ免除を実施しておらず、今回も方針は変えていない。
西日本新聞