横田基地からPFOSを含んだ大量の汚染水が多摩川へ!外部漏出を初めて認めた米軍の意図とは?
米軍は「PFOSを含む消火剤は使っていない」としながら使っていた可能性が浮上
しかし、米軍の情報をそのまま鵜呑みにしてよいのだろうか。いくつかの疑問が浮かぶ。 まず、基地外へ流れ出た水にPFOSが含まれていたという点だ。 米軍は「2016年以降、基地の消火訓練でPFOSを含む泡消火剤は使っていない」と説明してきた。 だが、関係者によると「消火訓練で使った水はPFOSが含まれているので外部に流せないため、ポンプなどで回収して貯水池に戻していた」という。貯水池は消火訓練用の水源調整池というだけでなく、排水調整池でもあったのだ。 つまり、米軍はPFOSを含んだ泡消火剤はもう使っていないとしながら、実際には、PFOSを含んだ水で消火訓練を行っていたことになる。 米軍の情報では「おそらくアスファルト上にあふれ出し」とあるが、貯水池は芝生で囲まれており、訓練場のアスファルトに達する前に地面に染み込んだことに疑いはない。今後、その下に流れる地下水を汚染するとみられる。
「意図的な廃棄ではないか」との指摘も
二つ目の疑問は、「豪雨により」としている点だ。 たしかに台風10号の影響で東京でも激しい雨が降ったとはいえ、関東地方に上陸したわけではない。PFOSを含む泡消火剤の使用をやめたとする2016年以降、あるいは日本が水質管理の目標値を設けて基地汚染への関心が高まった2020年以降、これ以上の豪雨が降ったことはなかっただろうか。 なぜ、今回の豪雨によって、横田基地外への漏出が初めて起きたのだろう。 米軍はこれまで、横田基地が汚染源であることを頑なに否定してきた。基地内に保管してあった泡消火剤の原液3千リットルが気がついたら地中に消えていた、とする2010年の漏出事故についても、「基地外へ流出したとは考えていない」と強弁した。周辺にある東京都のモニタリング井戸で高濃度のPFOSが検出され続けていたにもかかわず、だ。 それがなぜ、今回はみずから漏出を認めたのか。考えられるのは、PFOSに汚染した排水の処理をめぐる問題だ。 3年前の夏、沖縄の普天間基地の排水の処理をめぐり、日米当局が協議している最中、米軍は「独自の方法で処理した」として突然、64トン(ドラム缶320本分)の排水を下水道に放出した。米軍は「日本には排出基準はないから問題ない」と一方的に踏み切ったのだ。 直後に宜野湾市が下水を調べたところ、国の指針値の13.4倍にあたる670ナノグラムのPFOSなどが検出された。 このとき、米軍は「廃棄にはカネがかかる」と言い、下水に放流したのは経済的負担が理由だった、と明かしている。 さらに続きがある。普天間基地の水槽にはPFOSに汚染された排水がまだ残っていた。米側が引き続き下水に流せば、汚染は海に広がってしまう。交渉の結果、日本側が引き取って焼却処分することになった。その費用9200万円を負担したのは防衛省だった。 米軍の内部事情に詳しい関係者は「横田基地内では以前から、PFOS廃水の処分コストが高すぎる、という話が出ていた」と明かす。情報を閉ざす傾向の強い米軍が、漏出した水量を約12,640ガロンと具体的に明かしているのも珍しい。「豪雨による大量漏出」ではなく、意図的な廃棄の疑いがあるのではないか、というのだ。 「米軍は国内外のすべての基地で、PFOSなどを含んだ泡消火剤の廃止を求めています。完了を求められる期限が今年の9月末でした。その直前に、消火薬剤だけでなく、汚染されたままたまっている廃水も処分したかった。豪雨がその隠れ蓑に使われたと考えると、辻褄が合うのではではないでしょうか」 ちなみに、昨年1月時点では、基地内にある7施設の貯水槽に1400トンの汚染水が保管されていたという(昨年11月26日付東京新聞)。 米軍は10月16日、追加情報として、外部に流れ出た汚染水の濃度は1620ナノグラム(国の指針値の約32倍)と明かした。