「この歳で目指すべきものがあるのは幸せ」全米シニアオープン2位藤田寛之プロ単独インタビュー
海外でもらう課題に「もっと上手くなりたい」
吉田 最終日の朝は緊張したというお話がありましたが、やっぱり2回朝を迎えるっていうのは嫌ですよね。 藤田 2回を朝迎えて、しかもその2回目が残り8ホールってのもなかなかね(笑)。1ラウンドと8ホールというのは微妙に違いますからね。それと、最終日は風が北風に変わったんですよ。練習ラウンドを含めて全部南西の風でしたからね。海外のコースって風が変わると全然変わってしまうので、あの18番も5Wで届かないなんていいましたが、それまではPWとか9番アイアンで打っていた。それくらいコースが変わってくるんです。少し風が変ることに反応し過ぎたかもしれませんが、別のコースになったみたいな感じだったんで少し戸惑いました。 それまでワンパターンでやってたものが、もう一度考え直さなければいけなかったりとか。勝負が決まったホールも、花道からのアプローチで、アゲインストが強かったんで、スピンがかかることを想定して58度じゃなくて54度でピンの根っこまで行こうと思ったんですが、自分では突っ込んだつもりがあれぐらいしか飛ばなかった。今考えると50度でも良かったのかなって。海外でもらう課題というのはそういうところですね。なぜ日本ではあの状況が起きないのか(笑)。そういう練習ができないんですよね。「これ初めてなんで、どうやって打てばいいんですか」みたいなね。日本人選手はいつもそんなことばっかり言ってると思うんですけど、まあそれが楽しみでもあるというか、刺激にもなると思うし、もっと上手くなりたいという気持ちにもなるんですけど。 吉田 それって洋芝の対応という部分もあるんですか。 藤田 多々ありますね。薄いライからボールだけをヒットしていく打ち方を覚えなければいけない。僕の場合、高麗の浮いたボールをハンドファストで少し潰すイメージで、ソールを手前から滑らせながら低いボールで打ってスピンをかけてピンに寄せていくという感じなんですけど、こっちではその打ち方するとバンスが跳ねる。バンスがないウェッジも用意するんですけど、そもそもの打ち方が違いますかね。あとラフでの打ち方も、高麗は振り切れるし、飛んでいきますけど、こっちは全く振り切れないんで、どうやって上から打ち込むのか、それともフォロースルーで飛ばすのか、といったことで悩みますね。海外の試合に出るたびに、アプローチ練習場で他の選手を見て勉強をしています(笑)。 吉田 PGAツアーチャンピオンズの解説をしている者としては、ぜひ藤田選手に参戦してもらって、ベルンハルト・ランガー選手(独)を倒すところを見たいなと。 藤田 倒すなんてとんでもない(笑)。恐れ多いですよ。技術は本当にすごいんで。 吉田 その技術を吸収されて、YouTubeとかで発信していただくと日本のゴルファーのためにもなると思いますし、もちろん結果を出していただいて、日本のゴルフ界の歴史を変えてもらいたいなっていう思いを今回改めて感じました。 藤田 自分自身、「優勝したらチャンピオンズに行けるんだ」と思うと、それだけでなんかドキドキしましたからね。それが良くなかったのかも(笑)。 吉田 参戦も考えられているんですね。 藤田 行けるものなら行ってみたいと思いますが、年間通してアメリカを点々とするというのは、現実として捉えられなくて。ただ、同じチーム芹澤の宮本(勝昌)プロなんかは、「チャンピオンズ行きたい」といって、QTから頑張っていますしね。この年になって、目指すべきところがあって、こうやってやらせていただいていることが本当に幸せです。たくさんの応援もいだいて本当にありがとうございました。ただ本音を言えば、あのトロフィーを持って帰りたかったですけどね。