【連載Vol.2】デジタル・ファッションウィークで発見した、今後が楽しみな若手5選──ボラミー・ビジュアーとアーネスト ダブル ベーカー
ファッションジャーナリストの増田海治郎が、2021年春夏のパリ・メンズ・ファッション・ウィークから注目すべき新進ブランド5つをピックアップし、全3回の連載企画で紹介する。2回目は、パリの新星「BORAMY VIGUIER」(ボラミー・ビジュアー)と、ポルトガルを拠点とする「ERNEST W. BAKER」(アーネスト ダブル ベーカー)の魅力を伝える。 【写真を見る】ボラミー・ビジュアーとアーネスト ダブル ベーカーの最新スタイル
どこか謎めいたボラミー・ビジュアー
21年春夏のパリコレ参加組の若手でもっとも評価を高めたのは、「BORAMY VIGUIER」(ボラミー・ビジュアー)だと思う。 ボラミー・ビジュアーは1989年パリの郊外で生まれた。フランスとカンボジアのハーフで、パリのアートディーラーで働いた後、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズに入学。在学中にクレイグ・グリーンとアレキサンダー・マックイーンでインターンを経験し、卒業後はランバンに就職。元メンズ・クリエイティブ・ディレクターのルカ・オッセンドライバーのもとで4年半経験を積み、2018年に自身のブランドを立ち上げた。 ボラミーはミリタリー、トラッド、スポーツを現代的に再構築する手腕に長けていて、どこか宗教的で謎めいたクリエーションが特徴。ネームタグはシーズンごとに変更し、商品タグにはタロットカードが付属する。服を買うと“ボラミー教”に入信したかのような気分が味わえる不思議なブランドだ。日本ではインターナショナルギャラリー ビームス(同社ではボラミー・ヴィギエと表記している)、ヌビアン、16AOUT complexなどが取り扱っていて、まだプロパー価格で商品が完売するほどの知名度はないけれど、シーズン毎に注目度が増している印象を受ける。 アニメーションと組み合わせた2021年春夏の映像も、冒頭からとても怪しい。謎めいた軍隊が出陣する前の儀式のように整列していて、なにかヤバいものを目撃してしまったような不穏な空気感が漂う。各ルックは、まるでポケモンのキャラクターのように登場し、続けざまにルックを構成する各アイテムの特徴が文字と手話で紹介される。画面の切り替わりが速すぎて詳細が分からないのは勿体ない気がするが、面白い見せ方であるのは間違いない。 この摩訶不思議な映像は、多くのクリエーターやバイヤーの目に留まったようで、グッチのアレッサンドロ・ミケーレは、2020年11月に開催したファッションと映画のフェスティバルである「グッチ・フェス」にボラミーを招待した。映像のタイトルは『ロード スカイ ダンジョン』(LOAD SKY DUNGEON)。ボラミーは「中世の戦争やヒーロー系のファンタジー映画、吸血鬼映画、ジェームズ・ボンドのオープニングなど、自分の好きな様々な時代、言語の作品をミックスした」とプレスリリースで説明している。