「まるで宝石」──シチズンの高級時計カンパノラに新作登場。開発者が語るデビュー24年目の「原点回帰」
3モデルとも漆職人が手作業で制作
一言に「空」と言っても、人々がイメージする空はさまざまある。そのため、今回のモデルでは空のロマンを感じてもらえるよう、3モデルを別々のデザイナーが担当した。 「時間によって表情が違う点に人々はロマンを感じます。各モデルでは空の変化をそれぞれ違った形で表現することにこだわりました」(市川氏) 実際、3モデルを見ると、文字板デザインにそれぞれ特徴がある。 シチズン独自の「エコ・ドライブ」を搭載したモデルでは、漆と金属粉によって、星が瞬く様子を表現。6時位置のサブダイヤルや奥行きのある立体的な文字板構造を楽しめるようにしている。 「エコドライブのモデルは自分と宇宙しか存在しない静かな瞬間を描いています。隅々まで美しく星が広がる空を表現していて、比較的皆さんが想像しやすい空ではないでしょうか」(市川氏) 「ミニッツリピーター」(音で時刻を知らせる機能)、「パーペチュアルカレンダー」(カレンダーの自動修正機能)、「クロノグラフ」(ストップウォッチ機能)、「トゥールビヨン」(時計補正機能)という4大複雑機構を備えた「グランドコンプリケーション」は、銀河の輝きを、貝を用いた「螺鈿」(らでん)と漆で表現したモデルだ。 漆塗りの文字板に手作業でグラデーションを付けることで、光の揺らぎを感じさせるようにしている。 「グランドコンプリケーションはエコ・ドライブのモデルよりも、もう少し複雑な揺らぎをテーマにしています。 空は単色ではないので、デザイナーと職人の技術によってグラデーションをつけました」(市川氏) 最高級のメカニカルモデルでは、時計機構はもちろん、カンパノラシリーズの“アイデンティティ”ともいえる漆塗り文字板にも技術を結集させた。 担当したのは福島県出身の伝統工芸家で、「内閣総理大臣賞」の受賞経験を持つ儀同哲夫氏。漆塗りの分野では国内最高レベルの技術を持つ人物だ。 2002年から同シリーズの文字板制作を手がける匠の技の下、いくつもの漆の装飾技術を組み入れ、深い星雲の揺らめきや煌めきなど空の複雑な表情を表現している。