〈M-1グランプリ〉なぜ審査員は「歌ネタ」に厳しいのか…元王者ノンスタ石田が解説「スベりやすい芸人の共通点」
■ボケ数勝負がしたければ速度以外の工夫が要る こういうタイプの漫才は、ネタ時間が短いからできるともいえます。M-1みたいに4分間の勝負ならば逃げ切ることができますが、5分とか10分となると難しい。やる側もそんなに息がもたないし、何よりネタ時間が長くなればなるほど、お客さんにボケを読まれやすくなってしまうからです。 2023年のM-1決勝のときのヤーレンズとさや香、どちらのボケ数のほうが多いかといったら圧倒的にヤーレンズです。 ヤーレンズは「小ぶりなボケの種類と数」で笑いをかき集める。さや香は「振りに時間をかけた少数精鋭のボケ」で笑いをかき集める。全体を通してかき集めた笑いの量は、ひょっとしたら、さや香のほうが上回っていたかもしれません。 ボケの量と質、どちらをとるか。小ぶりなボケを数打つか、それとも練ったボケを少数打つか。どちらのほうが「笑いの総量」は多くなるのか――。 僕は自虐半分、ボケ半分で「質より量で勝負してます」と言っていますけど、少ないボケ数で大きな笑いをとるスタイルをうらやましく思っています。もし、ボケ数で勝負をしたいなら、ただスピードを上げてボケ続けるのではなく、ヤーレンズのように、一工夫が必要な時代やと思います。 ---------- 石田 明(いしだ・あきら) 芸人 1980年2月20日生まれ。大阪府大阪市出身。お笑いコンビ「NON STYLE」のボケ、ネタ作り担当。中学時代に出会った井上裕介と2000年5月にコンビ結成。NHK「爆笑オンエアバトル」9代目チャンピオン、「M‐1グランプリ2008」優勝など、数々のタイトルを獲得。「M‐1グランプリ」では2015年に決勝の審査員を、2023年には敗者復活戦の審査員を務めた。2021年からNSC(吉本総合芸能学院)の講師を務め、年間1200人以上に授業を行っている。 ----------
芸人 石田 明