コロナ禍の人事評価が「納得を得られない」事情 テレワーク拡大で見えにくい部下の仕事ぶり
コロナ禍によって、テレワークやオンラインでの商談などが進み、私たちの働き方が変わりつつあります。一方で、その働き方の評価については新しいものになったのでしょうか。従来までの人事評価のやり方が、社員からの大きな反発を招くリスクについて、『改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』の著書がある、人事評価制度コンサルタントの山元浩二氏が、事例とともに解説します。 「コロナで業績は落ちたが、なんとか資金をかき集め、前年比微減で賞与を支給することができた。業界では支給しなかったところもあるようだし、社員は納得してくれるだろう」
田辺社長(仮称)は冬季賞与の支給を終え、社長室でほっと一息ついていました。 そこへ、いつも営業トップの業績を上げていた西田(仮称)が、ノックもせずに駆け込んできました。 「社長、今回の賞与ですが、私のやったことがまったく評価されていないじゃないですか。テレワークは会社からの指示で、その間、業績につなげる準備を懸命にやったのに……」 西田は、こう言い残して社長室を出ると、二度と会社にやってくることはありませんでした。
■遅れる人事評価制度の改善 コロナ禍において、新たな働き方に応じた「人事評価制度」の改善が遅れたため、社員の退職や大きな不満を招いてしまうケースが発生しています。 冒頭の事例も私が直接確認したものの1つです。こうした状況が続けば、生産性の向上を求められている日本企業にとって、その原動力となる「人材力」を低下させてしまうことになるでしょう。 こうしたトラブルを検証した結果、どれもその要因は共通のものでした。それは、在宅勤務時の評価を従来の人事評価制度で行ってしまったことでした。
問題点は2つ。1つは、「評価基準」、もう1つは「コミュニケーション」です。 まず「評価基準」についての問題点は、勤務形態が大きく変わったにもかかわらず、評価基準の修正や改善をしていなかったという点です。 従来の評価基準の項目や内容は、当然、同じ職場環境で仕事をしている状態の部下を評価するためのものでした。コロナ禍でリモート状態となったにもかかわらず、そのままの評価基準で評価してしまったため、適正に評価できず、部下の不満につながったのです。