学術会議「活動が見えていない」は本当か?自民・下村氏の回答が再びミスリード
「日本学術会議」の新たな会員として推薦された学者6人の任命を、菅義偉首相が拒否したことをめぐる問題。自民党の下村博文・政務調査会長は日本学術会議について10月7日、「政府に対する答申は2007年以降出されていない」などとして、会議の在り方自体を検討し直す必要があるとの認識を示した。しかし、2007年以降に答申が出ていないことが指し示すのは、政府が13年近く日本学術会議に対して諮問を行ってこなかったということになる。BuzzFeed Newsはファクトチェックで下村政調会長の発言を「ミスリード」とした。下村氏は10月14日、BuzzFeed Newsの取材に回答。自らの発言について説明をした。一方でそのなかには再び「ミスリード」であるといえる情報もある。改めて、ファクトチェックをした。【BuzzFeed Japan / 千葉雄登】
「ホームページで提言を公開したとしても…」
答申が2007年以降に出されていないことを受け、「活動が見えていない」と指摘した下村氏。だが、日本学術会議は下村氏が「問題」とした2007年以降、321の提言を出し、10の審議依頼に対する回答を提示している。 こうした事実を踏まえ、BuzzFeed Newsは下村氏の事務所に10月9日、FAXで質問を送付。「ミスリード」とする記事は9日に公開し、「回答があったら追記する」としていた。 下村氏は10月14日にFAXで回答をした。そこでは「問題は、長年にわたり多額の公費を受け取っている、行政機関たる日本学術会議が、その提言をいかなる手段で政府に提出しているか、という点にあると考える」と指摘。こう述べた。 「2008年以降、法律に定められた形式ではない『提言』を321件行っていることは事実である」 「私が政府側に確認したところ、提言の提出にあたっては、関係省庁の担当課にメールで送る程度とのことであり、大臣や副大臣と面会して手交といった類のものではない。申入れについては、1985年を最後に、平成、そして令和の間、一度も行われていないということも、これまた事実である」 「たとえ、ホームページで提言を公開したとしても、日本学術会議が行政機関である以上、提出先の政府が内容をしっかりと受け止めなければ本末転倒であり、そのような意味で、私は『活動が見えない』と申し上げた」 提言を321件行っていたとしても、それらは「メールで送る程度」であり、それだけでは「活動が見えない」と、その提言の示し方が問題であるとする主張だ。 また、答申が出ていない原因は政府側にあるという意見については、どのように捉えているのか。 「『政府から諮問がないので答申を出していない』との反論があることは承知しているが、日本学術会議は、政府からの諮問を待たずとも、勧告、要望、申入れなど様々な働きかけが可能であるにもかかわらず、勧告や要望は約10年、申入れに至っては約35年の間、一度も行われていないことに、強い違和感を覚える」 「日本学術会議の新型コロナ対策の提言は7月以降でわずか2件であり、『諸外国のアカデミアとは開きがある』との指摘も存在する」 「菅政権は行政改革を一丁目一番地に掲げており、税金の使途について納税者たる国民の理解が得られるよう、わが党としても政府と一体となって強力に推進していく」 そのうえで、「コロナ禍という国難のさなか、政治と学術が対峙することは決して望んでいない」とも言及。 「内閣第二部会の下に新設したプロジェクトチームにおいて、行革の観点から日本学術会議のあり方について議論を深めていきたい」と、改めて日本学術会議のあり方を見直すべきとの姿勢を示した。