イノシシのジビエは「害獣ビジネス」か「天からの恵み」か
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「害獣ビジネス」という言葉があります。田畑を荒らすイノシシや樹木の樹皮を食べるシカを駆除するだけでなく、それを売って販路を広げようという試みです。山や川の自然に恵まれた福井市では2015年度に駆除されたイノシシは1322頭、ジビエとして地域活性化を図ろうとしています。12日から東京都内61の飲食店で展開される同市産の食材フェア「福井市フェア」(30日まで)でもイノシシ肉が提供されることになっています。
イノシシ肉の価格は豚肉の4倍
イノシシ肉をチンゲンサイと一緒に豆板醤などで炒めた「辣炒猪肉(ラーチャオジューロウ)」を提供するのは東京・神楽坂にある中華料理店「芝蘭」です。料理長の中洞新司さんは「中華はいろんな食材を使いますが、イノシシを使った料理は聞いたことがありません。常連さんがおっと思う新しいものになりえます」と話します。 中洞さんが用意したイノシシ肉は、豚肉と違って血の色が濃い肩ロースの部分で、きれいにスライスされていました。この肉を中華鍋を使って手早く炒めていきます。調味のポイントとして味噌を使っているといい、甘辛い香りが厨房に漂ったかと思う間もなく、あっという間に出来上がりました。 湯気が立つ目の前の料理は、チンゲンサイの緑とソースのオレンジ色が色鮮やかです。そこからまずイノシシ肉をつまんで口に入れてみると、歯ごたえのある、そして肉厚な、豚肉とは違う旨味が感じられました。ジビエは強い野性味がするものかと思っていましたが、意外とクセのない食味です。そう感想を話すと、中洞さんは「本当はもっとけものの感じがあった方がいいのですよ」と言います。 そもそもイノシシを家畜として飼いならしたのが豚です。豚のように野生の風味がないイノシシの肉は、豚と差別化がしにくいのだと中洞さんは説明します。イノシシの肉は1キロ4000円と豚肉の4倍の値段がするので、それに見合う豚とは違った価値が必要だということなのです。