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大倉忠義・成田凌主演作、行定監督「背徳感を表現するのは難しい」

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『失恋ショコラティエ』『脳内ポイズンベリー』を描いた漫画家・水城せとなが、男性同士の恋愛模様を描いた名作『窮鼠はチーズの夢を見る』が行定勲監督により映画化、9月11日に公開された。 【写真】出演者ら 女性に誘われると断れず、「流され侍」とも称されるサラリーマン・大伴恭一を関ジャニ∞の大倉忠義、大学生時代から恋し続ける探偵の今ヶ瀬渉を成田凌が演じる。行定監督とも親交が深く、ときには相談役も務める映画評論家・ミルクマン斉藤が本作に切り込む(内容はネタバレを含むので、ご注意を)。 取材・文/ミルクマン斉藤 撮影/南平泰秀

「この映画はLGBTQでも、BLでもない」

──俗に行定監督は「恋愛映画の名手」として認識されてますけれど、この作品はその究極のかたちだと思うんです。こんな後味の映画観たことないという。 そうですかねぇ・・・。ただ、ラヴ・ストーリーってなかなか気恥ずかしくって、今までの作品も「恋愛映画」って認識では撮っていないんですよね。例えば、『劇場』(2020年公開)も売り文句としては「恋愛映画」って言われちゃうんですけれど、はたして恋愛映画かなぁと思ったりするところがあって。でも、これは紛れもなく恋愛映画です。 ──恋愛映画というのは障壁が大きいほどドラマティックなものなんですけど、これはゲイ男性の今ヶ瀬渉と、ヘテロ男性の大伴恭一の物語ですからね。特に自分はヘテロであると信じている、あるいは信じたい大伴にとっては、常に葛藤のなかにあることになる(編集部注:ヘテロ=異性愛者)。 恋愛のありかたが男同士だからこそ、その定義が明確にされるというか。セリフでも言っていますけど、「すべてにおいて、その人だけが例外になる」と。確かにそうだよね、って当たり前のようなことのように感じたけど、意外にそういうことを映画でやってないんだなぁ、って思ったんです。 今まで恋愛という行為に没入している人たちの、あくせくした感情や行動を見せるだけで『恋愛』って言ってきたんですけど。 ──恋愛の定義のようなものをよりはっきりと押し出さないと、観客には納得できるところまで至らないし。 その通りなんですよ。濡れ場をあんなに生々しく見せる必要があったのかって言う論もあるんです。でも、その選択は僕にとっては最初からなかったんですよ。なぜなら、恭一がとにかく快楽としてセックスはありなんだ、と。 心情が伴ってなくても、肉体として、相手に対する反応として、受け入れ方の入り口として、セックスありきなんだと言うことは明確にしておかないと。情とかそういうものでなれるもんじゃないですよね。 ──だからこそ恭一は「流され侍」なんて言われてるけど、つまるところ快楽主義的なヤリチン人生を過ごしてきたという。 そこなんだよね。今ヶ瀬に大伴が咥えられた瞬間に「あり」なんだって。で、大概の男はそれを経験できるかっていったら、できないんですよ。中学生のとき友だちにそういう行為に憧れて俺のを咥えてくれって言って、「あ~、やっぱり無理です」とかやっているヤツがいた。あとは自分のを自分で何とかできないかなぁっていって、ほぼほぼの人がやったでしょ? ──それは全男性にあるあるなことで(笑)。宮藤官九郎さんの映画にそれに特化した映画がありましたね。 『中学生円山』(2013年公開)ね。俺はあれがよく分かるんですよ。ホントにバカなんだけど。『窮鼠~』のときもみんなで話したんです。絶対にやったよねって(笑)。 「身体がどうしても届かないんですよね」って。で、自分のモノを長くするか、自分の身体を柔らかくするか、どっち派でした?っていう話になって、長くするのは結構時間がかかるような気がするから、みんなお酢を飲んで身体をやわらかくしたっていう(笑)。 ──中高生あるあるだけど、それはそれで熱心になって(笑)。 でも男ってそれぐらいバカだから、欲動とかっていうのがやっぱりあるんだよ、って話をしてて。だから、理解できなくはないよね、って。 ──あえて言いますと、僕はヘテロです。そんな僕がこの映画にすごく純粋な恋愛映画を見てしまうのは、恭一がどうしようもなくヘテロだ、っていうのが大きなポイントなんですよね。だから、ジェンダー観を根本から揺すぶられる。 それは大きいです。これはLGBTQの映画ではない。そういうジャンル化したいのは分かるけど、そういうのであまり観て欲しくない。最初から自分自身そう思ってないんですよ。あと、BLでもちょっとない。BLは分かるんだけど、この作品の場合、もともとお互いがお互いを求め合ってないから。 ──映画のラストに至るまで、そこは開かれてますよね。 だから、僕はセックスだけは別物にしたかったんですよね。まぁ、後半にはもう女より男の方が良くなってるという感じはあって、そこに背徳心とかが生まれたりするのが人間だろうな、と。 だから女性陣のキャスティングは慎重を期しましたね。小原徳子(恭一の浮気相手で今ヶ瀬との再会のきっかけとなる)は性的なものを刺激するようなところを持っている女性をキャスティングしたつもりではいるんです。 恭一の大学時代の元カノのさとうほなみ(ちなみに「ゲスの極み乙女。」ドラマー)にしたって魅力的な子を選んだ。恭一の妻、咲妃みゆなんかも抜群に良かったですよ。男だったら絶対こっちに行くよ、という子にしたんです。 ──その女性陣に抜かりのないのが流石というか、恭一の部下で恋人となるたまき役の吉田志織さんも含めて。 女性陣はあまり色が付いてないキャスティングにしたいと思って選んだのもあり、みんなそれぞれ良いんですよ。でも超えてくるんだよね、成田が。カメラマンも「成田がかわいく見えてきたなぁ」って(笑)。そこがやっぱり成田凌の力でもあるし、持ってるものであるから。 ──劇中で、成田くん演じる今ヶ瀬は「粘着質のゲイ」って言われますけど、確かに最初はそう見えるんですよね。ストーカーっぽいし。でも、その子犬のような、というか受け入れてもらいたいけど自分からは強く要求できない、的な『しっとりキラキラ目線』は彼が創り上げてきたんですか? そうですね。普段は社会のなかで男として生きている人たちを中心に会いに行ったりしたらしいんですよ。仕草とか、考え方とか、心情とか、しゃべり方とかいっぱい盗んではきたらしい。彼らに共通していえるのは、目がキラキラうるうるしてるんですって。それであれが自然に身についたんだろうね。それがすごいなと思って。

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