「故人の自宅」をめぐって“相続トラブル”の危機…配偶者が「住む家」と「生活費」を確保するには?【専門家が解説】
身内が亡くなると、膨大な「手続」や「相続」を前にして、何から手をつければよいのかわからないという人が多いようです。そこで本記事では司法書士である岡信太郎氏、税理士である本村健一郎氏、社会保険労務士である岡本圭史氏らの監修による『改訂新版 身内が亡くなったあとの「手続」と「相続」』から、いざというときのために知っておきたい「葬儀後にやるべきこと」について、一部抜粋してご紹介します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
遺産の大部分が故人の自宅…複数人で平等に分ける方法は?
遺産相続で最もトラブルが起こりやすいのが、故人の自宅です。その理由は分けるのが難しいからです。 家を複数人で分けるための方法はいくつかあります。以下、代表的な方法を4つ紹介します。 ◆代償分割 1つは、「代償分割」([図表1]参照)。国税庁の路線価図などを参考に家の評価額を割り出す方法です。正確に評価額を出したい場合は、不動産鑑定士などのプロに頼みます。家を相続した人が、その代わりとしてほかの相続人に現金(代償金)を支払うことになります。 仮に家の評価額が3,000万円なら、1人が家を相続し、残りの2人は家の代わりに現金1,000万円ずつを受け取ります。家を相続した人が高額な現金を用意する必要があるので、この手法を使えるのはある程度の資産家に限られます。 ◆換価分割 2つめは「換価分割」で、家を売却して現金化する方法です([図表2]参照)。現金なので相続人同士できっちり分けられます。 しかし、実家を売るのは抵抗がある人もいるでしょう。また、家族の思い出がつまった家を売却するということで、新たなもめごとが発生することもあります。 ◆共有分割 3つめは、法定相続分に合わせて家を共同で所有(共有)する「共有分割」です([図表3]参照)。 たとえば、相続人が「きょうだい3人」だったら、1つの物件に3人の名義が入ることになります。きょうだいの代はそれでいいかもしれませんが、その子どもの代でもめることが多くなっています。 ◆現物分割 4つめは、無理に分けない「現物分割」([図表4]参照)という方法です。たとえば、1人は家、1人は美術品、1人は株券といった具合に、無理に分割せず、別々の資産で平等に分ける方法です。 しかし、これは家以外に同等の価値がある資産があることが前提ですので、利用できるのはある程度の資産家に限られます。 これら4つの方法はいずれも一長一短です。自分たちの状況に合った方法を選びましょう。