【トランプ政権への“駆け込み行動”】過激な外交政策前に各国が起こす行動と内在する危険
バイデン政権とトランプ政権は互いを嫌悪しているが、このような事態を抑止することに共通の利益を有している。 従って、双方のチームはバイデン政権がレームダックの期間における共通の枠組みを明確にすべきである。貪欲なプーチンを食い止めるため、米国はウクライナに更なる兵器を送り、長距離兵器の使用制限を緩和すべきである。イランの核施設の一方的な攻撃には、その成功に恐らく必要とされる米国の軍事的支援は得られないことをイスラエルに明確にすべきである。南シナ海については、海洋の権利に関する米国の立場には揺るぎがないことを中国に分からせる必要がある。 将来の歴史家は、米国が戦後の国際主義から新たなより孤立主義的な外交政策に転じた瞬間として次10週間を描くかも知れない。しかし、双方のチームが賢明に行動すれば、レームダックの期間が世界的な大混乱をもたらす訳では必ずしもない。 * * *
次期政権もすでに動く
米国における政権移行の過渡期は不安定であると常に見られて来たが、今回は過激で予測不能のトランプへの権力移行という大きな変動の過程に当たるので、この間隙を突いて敵が利得を得るべく狡猾な行動に出る可能性を注意するに越したことはない。 喫緊の課題はウクライナ戦争であるが、トランプの在任中にウクライナが敗北し独立を喪失すれば、それは彼の汚点として残る。トランプにはそれは耐え難いはずだと観測する向きがある。そうかも知れない。 であれば、24時間以内に戦争を終わらせる公約を果たすために、すぐにでも軍事支援を強化してウクライナの戦闘能力を高め、可能な限り失った領土を回復させ、もってウクライナが強い立場で和平交渉に臨み得るようにすることが必要に違いない。折しも、バイデン政権は、遅きに失した感はあるが、ATACMS長距離ミサイルをロシア領内の攻撃に使用することを認めたと報じられている(英仏のStorm Shadow/SCALP空中発射型巡航ミサイルに対する使用制限も解除される)。 双方のチームが軍事支援について整合性のある形で行動し、ロシアの進撃を食い止める努力をする素地はあるように思われる。次期副大統領のJDヴァンスはウクライナへの軍事支援に消極的のようであるが、安全保障担当補佐官に指名されたマイケル・ウォルツはロシアに交渉を強いるために兵器供与を加速すべきだと論じているようである。 中東に関しては、この社説はイランの核施設の攻撃には必要とされる米国の軍事的支援は得られないことをイスラエルに明確にすべきことを主張している。トランプの言動から見て、双方のチームが一致してそのようなメッセージを送ることには無理があろうが、送る必要もないであろう。