急増する「非濃厚接触者」のコロナ感染…第三波がもたらす課題
新型コロナウイルスが全国で猛威をふるうなか、これまでにない「変化」が生じている。試行錯誤を経てコロナ対応に慣れてきた医療現場だが、細かな課題が次々と現れ、さらには今後の対応に向けて準備を整えなくてはならず窮迫が続く。「状況は一気に変わる」と痛感した筆者が、医療現場から新型コロナの「いま」を語る。※「医師×お金」の総特集。 GGO For Doctor はコチラ
感染状況に異変…「非濃厚接触者のコロナ陽性」が増加
新型コロナウイルスの感染が、全国で拡大しています。筆者が働く福島県いわき市でも、2020年12月中旬以降、陽性者が増えてきており、1日に10名ほどが陽性となる日もあります。これまでは濃厚接触者のなかから陽性者が出てくることがほとんどでしたが、陽性者との接触がなかったとされる方のなかからも陽性者が出てきています。市中で感染が拡がっているものと思われます。 筆者がお手伝いしているPCR専門検査センターの置かれる施設でも、1日に50名以上の検査を行うことは珍しくなくなってきました。2020年12月初旬までは、平均して毎回5名程度の検査でした。状況は一気に変わることを痛感します。 スタッフも慣れてきたため、検査件数が急増したとしても、終了時間が遅くなるだけで対応できないことはありません。患者さんが最初から最後まで車から降りることのないようにしていたため、一日の検査がスムーズに進むかどうかは車の誘導の巧拙にかかっていたようで、試行錯誤を経て効率的誘導ができるようになり、単位時間あたりに捌ける件数も増えてきています。
医療従事者も患者も「負担大」の現状…課題は山積み
ただやはり、看護師をはじめとした現場のスタッフが疲弊してきていることは確かです。年末年始も普段と変わらず開設していました。これまでは、スタッフ皆で賑やかに検査にあたってきていました。このところは、慣れて淡々とこなすようになったこともあるでしょうが、疲れからか口数が少なくなっているように感じます。 それから、陽性者が増えてきていることで、市内の病床が逼迫してきています。PCRセンターが置かれる施設でも、陽性者数の増加に伴い、2020年12月の後半から、軽症者の入院受入も開始となりました。宿泊療養施設(ホテル)も、積極的に利用しています。 この地域では現在、陽性とわかった場合は基本的に、ホテルに入所する前に一旦入院することになっています。入院したうえで検査を行い、病状が安定していてホテルでも問題がないことを確認していました。 しかし、病床数が限られ、また一度に多くの陽性者が出てきているなか、各医療機関と保健所の間では、「無症状症者などであれば、入院を経ずに最初からホテルを利用したほうがいいだろう」という意見が出ています。 一度入院した患者さんが途中でホテルに移るより、入院したまま治療を継続したほうが、患者さんにとっても医療機関側にとっても、負担は少ないのです。患者さんにとっては移動自体が大変です。 医療機関側にとっては、患者さんが実際に体自体を移動させる際の対応だけでなく、ホテル療養で問題ないことを示すための検査や書類作成といった手続き、ホテルや行政側との調整が必要で、これにかなりの時間を割かなければなりません。 患者さんが直接ホテルに入る際、事前検査はどうするのがよいのかといったことはまだ完全には整理されていません。CT検査や血液検査などを行うことになりますが、撮影、採血を行う施設はどこにするのか、誰が結果判定をするのか、つまり「ホテルで問題ない」という判断は誰がするのか、という課題があります。 ところで、入院を受け入れ始めた件の施設は、「クリニック」として扱われています。民間が立ち上げた施設ですので、継続性を考えると経営的にも安定させなければなりません。クリニックであるために苦しいのは、病院より入院の診療報酬が少なくなってしまうことです。患者さんの受け入れに関しては同じ役割を担っていますが、「入院基本料」だけでもおそらく、陽性者を受け入れている近隣の病院より7,000円ほど少なくなってしまうのです。継続性をどう担保するかも課題です。