夜が明るすぎる光害の問題、パリでは消灯早めるなどの対策 東京でも一部市民ら活動
市街地では鮮やかな照明が街を彩る一方、星が見えにくくなったり、動植物の生態に悪影響が出たりする光害が問題になることもある。先進的な対策で知られるフランスの現状や東京での取り組みを紹介する。(宋光祐、藤崎麻里) 【動画】約30年でこんなに増えた東京の人工の光 深刻化する光害
「光の都」と呼ばれるパリで7~9月、「星の下のパリ」と題したイベントが開かれた。フランス天文学協会(AFA)とパリ市が企画する毎年恒例のイベント。市内南西部の公園では8月末の夜、AFAのメンバーが望遠鏡を用意して市民ら約50人を迎えた。 参加者が肉眼で見えない星を見つけて喜ぶ姿に、AFAのニコラ・フランコさんは「ストレスの多い現代こそ、星空を見て平穏に過ごす夜が必要だ」と訴えた。 フランスでは2009年に施行された包括的な環境保護法で、電力の浪費や星空鑑賞の妨げにつながる夜間照明を規制の対象とした。深夜1時以降の街頭広告や看板の消灯など具体策が定められ、欧州では光害対策の先進国の一つとされる。 ロシアによるウクライナ侵攻を背景に起きた燃料費の高騰を受けて、パリ市は2022年12月から、節電と光害対策を目的に、街頭広告の消灯時間を国の規制よりも厳しい午後11時45分としている。
しかし、夜空の保護を訴えてきた市民団体「ANPCEN」のミシェル・ドロムさん(67)は「パリは明るすぎる」と指摘する。違反者への罰金もあるが、市の対策は、職員の人手不足などで取り締まりの実施が限定的になっているという。 地方都市では、治安面の不安の解消が課題だ。「夜間照明が消されるせいで、ヘッドランプをつけないと歩けない」。9月10日、仏南東部グルノーブル市の市長エリック・ピオルさん(51)をゲストに迎えたテレビ番組で、司会者が市の清掃員の意見を読み上げた。夜間照明の抑制が治安悪化を招いているかのような物言いにピオルさんは「フェイクニュースだ」と反論した。 同市は2015年に光害対策を本格化し、約2400カ所の街灯を削減。副市長のモード・タベルさんは取材に「住民の理解を得て粘り強く進める政治的意思が欠かせない」と話した。照明を減らした地区のガイド付き説明会を開くなど、住民に必要な明るさは確保していると体感してもらう取り組みを続けている。 観光大国のフランスでは、名所のライトアップと照明の抑制の両立も課題。ANPCENは、名所については訪問者数の調査を通じて効果的な時間帯に限った照明の点灯を勧める。