終活のプロが教える子どものいない夫婦の揉めない相続。「いつ書く?」「夫だけ?」注意したい遺言書のあれこれ
◆遺言書の一部が実行できなくなったら? これもよくある質問ですが、たとえば遺言書に「不動産を**に相続させる」と書いてあったのに、遺言者の死亡時にその不動産がすでに売却されていた場合、その遺言は実行できません。 その場合は、その不動産についての範囲のみ、遺言の撤回があったものとして扱われるため、不動産についての内容以外の遺言は有効です。 そのため、仮に自宅の処分を将来予定していたとしても、遺言書自体は問題なくつくることができます。 このように、遺言についての考えが変わった場合には、その部分のみを書き直すこともできます。 その時点での考えで遺言書をつくっておき、事情や考えが変わった場合には、書き換えることで対応可能です。
◆「遺言書」は夫側だけがつくるもの? Q:おふたりさまの場合、夫が遺言書を書けば安心ですか? A:妻が先に亡くなる可能性もあるので、お互いに遺言書を作成することをおすすめします。 私のところにいらっしゃるご夫婦の遺言相談の9割以上が、夫側の「遺言書をつくっておきたい」というものです。 もちろん、妻が専業主婦だったなどの理由で、夫婦の財産の名義がすべて夫になっているというケースもあるでしょう。 しかし、実際には妻も働いていたり、親から相続したりと、自分の財産をもっているケースも多いのではないでしょうか。このような場合でも、なぜか夫しか遺言書をつくらないケースが多いのです。 理由をお聞きすると、「自分のほうが先に死ぬから」と、みなさん根拠のないことをおっしゃいます。 統計的にも男性より女性のほうが長く生きる可能性が高いのは事実ですが、実際に夫婦どちらが先に旅立つことになるのか、神さま以外はわかりません。
◆たすきがけのように、お互いのための遺言書をつくっておく おふたりさまのご家庭で妻が先に亡くなった場合、遺言書がなければ、当然ですが夫のほかに妻の親兄弟も相続人となります。 妻が遺言書を残さずに先立ってしまった場合、夫は妻の親兄弟と共同で相続の手続きを行うことになります。やはりちょっと面倒ですよね。 そのような事態を避けるためにも、遺言書の作成が最もシンプルな解決策です。 おふたりさまの場合、夫の財産は妻に、妻の財産は夫へというように、お互いにたすきがけのような内容の遺言書にするとよいのではないかと思います。
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