過小評価も過大評価もできない「新型コロナウイルス」 現時点で分かっていること
感染力は季節性インフルエンザより強い?
一方で、感染力は強いとみられています。世界保健機関(WHO)でシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子氏は、14日に開かれた学会の緊急セミナーで、「新型コロナウイルスの感染性は『2』よりは上だろう。季節性インフルエンザは『1.4』から高くても『1.6』くらいなので、かなり感染性は高い」との見方を示しました。 感染力の強さを示す情報として、発症した中国人と1時間ほどランチをした人が感染したり、さらにその人が教会に行って賛美歌を歌っていたときに2列前にいた人が感染したりした韓国での事例を紹介しました。 ただ、中国では新たな感染の症例数が減りつつあることや、当初は動物からヒトへの感染(スピルオーバー)によって広がったものの、12月以降はほぼヒト・ヒト間の感染である状況を報告し、「持続的なスピルオーバーは起こっていないんじゃないか」と述べました。
今後「市中感染」がどんどん起こる可能性
国内初の死者や感染経路の分からない感染者が報告された13日夜の翌日でもあった緊急セミナーでは、「市中感染」など日本国内でのさらなる感染拡大への危機感も明らかになりました。 進藤氏は、WHOは新型コロナウイルスに対して「まだ根絶を目指した封じ込めのオペレーションをしている最中」とした上で、「今一番世界が心配しているのが日本。クルーズ船の問題もあって注目度が高い」と指摘しました。 国際感染症センターの大曲貴夫(おおまがり・のりお)センター長は、新型コロナウイルスにはまだ確立された治療法はなく、「病気のことがよく分かっていない」状態だと強調。「日本国内でヒトとヒト(間の)リンクが追えない感染事例が出てきているのは決して驚くことではない。私たちはまだこの病気の全体像が見えていない。過小評価も過大評価もしてはいけない」と述べ、「海外渡航歴のない患者が日本でも出始めている。市中で感染がどんどん起こる可能性は想定しないといけない」と警告しました。 検査体制がまだ十分に整っていない新型コロナウイルスに対しては、「検査が早くできればとの声もあるが、それが揃うまでは臨床的に経過を追っていくのは非常に大事」だとこれまでの症例を踏まえて話しました。 現在は横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内での集団感染が懸念されていますが、今後注意をしなければならない感染経路の一つとして、防衛医科大学の加來氏は「院内感染」を指摘します。医療従事者や患者らが知らない間に感染する院内感染は、SARSの際にも感染拡大の主要因となりました。 加えて、ウイルスの「水際対策」とは、文字通りの「水際」だけの対策ではなく、あらゆる分野の専門家が連携し、総合的な対応を講じるものだと説明。重要なのは、感染によって隔離されている患者の病態の把握と適切な医療を提供することだとして、すでに入り込んでしまったウイルスに対しては、国内サーベイランス(監視)を強化して対応するべきだと述べました。