過小評価も過大評価もできない「新型コロナウイルス」 現時点で分かっていること
「新型コロナウイルス」の感染者が日本国内でも増え始めています。新興の感染症は、ワクチンなどの治療法が確立されておらず、感染経路なども分かっていないことが多く、今回の新型コロナウイルスについても、まだ分からないことがたくさんあります。COVID-19(コビッド・ナインティーン)と呼ばれるこの感染症のウイルスは、どんな特徴を持っていて、感染するとどんな症状が出るのでしょうか。 【動画】新型コロナ感染症はどんな病気? どんな症状が出る? 感染症学会などセミナー 13日に感染症学会などが横浜市内で開いた市民・メディア向けのセミナーと、14日、15日に日本環境感染学会が同市内で開いた学会での専門家の講演を中心に、具体的な症例の特徴や感染拡大の状況について現時点で分かっていることなどをまとめました。
コウモリのコロナウイルスがヒトに感染?
そもそもなぜ「コロナウイルス」と呼ばれるのでしょうか。画像をみると分かりますが、ウイルスの外側にタンパク質の突起がいくつもあります。これが王冠(クラウン=Crown)の形に似ているため、そのギリシャ語であるコロナ(Corona)と名付けられました。 ヒトのコロナウイルスには4種類あり、いわゆる風邪(感冒)の病原体として知られています。 今回のウイルスはその新型で、呼吸器に感染するウイルスです。防衛医科大学の防衛医学研究センター、加來浩器(かく・こうき)教授の説明によると、SARS(サーズ=重症急性呼吸器症候群)やMERS(マーズ=中東呼吸器症候群)と同じβ(ベータ)コロナウイルスに分類され、「アルコールで失活しやすいという弱点がある」といいます。 コウモリのコロナウイルスがヒトに感染したと考えられているSARSと似ていて、今回の新型もコウモリを宿主としているのではないかとみられています。ただ媒介動物が何だったかは分かっていません。
致死率は2.5%程度 今後はもっと下がる?
新型コロナウイルスに感染すると、どんな症状が出るのでしょうか。実際に感染した患者を診察したことのある国際感染症センターの医師、忽那賢志(くつな・さとし)氏は、13日の市民向けセミナーで、 「風邪のような症状が1週間くらい続く」 「7割くらいの症例で肺炎を伴うと考えられる」 「無症状の感染者もおり、より軽症な患者も多いことが予想される」 と総括的な印象を語りました。 当初、メディアなどで「新型肺炎」と報じられるなど、肺炎とセットになっている印象が強いですが、「すべての患者が肺炎になるわけではないので、『新型コロナウイルス感染症』が医学的には正しいかもしれない」とも付け加えました。 具体的な潜伏期間などについては、それまでに公開されていたデータをもとに以下のように説明しました。 ・感染してから発症するまでの潜伏期間は平均5.2日。おそらく多くの症例は1週間以内に発症している。 ・病院を受診するまでは5日くらいかかっている(平均4.6~5.8日)。発症当初はひどくない風邪の症状が1週間くらい続き、ひどくなった人が受診するのだろう。 ・入院までは10日(平均9.1~12.5日)と考えられる。 感染者の主な症状については、昨年12月から爆発的に感染者と死者を出している中国・湖北省の武漢の症例をもとに紹介しました。 最初に発表された重症例が中心の41の症例(致死率15%)では、呼吸苦を訴える患者が55%に及んだといいます。その後公開された軽症患者を含む1099例(致死率1.4%)では、88%の患者が発熱の症状を訴えました。ほかに目立つのは、せきや咽頭痛や鼻詰まりなどの症状。こうした風邪のような症状のほか、筋肉痛や頭痛、悪寒などインフルエンザにも似た症状も出るといいます。 重症化しやすい患者の傾向については、「それほどデータは多くなく、はっきり分かっているのは」と前置きした上で、▽高齢者、▽持病を持つ人、▽男女差なし、などを挙げました。そして「おそらくだが、免疫不全の人や妊婦は重症化しやすい可能性はある」と述べました。 新型コロナウイルスの全体的な致死率は、どれくらいでしょうか。忽那氏によると、現在のところは2.5%程度で、SARS(9.6%)やMERS(34.4%)に比べると低い傾向にあります。「今後もっと軽症患者を診断できるようになると、見た目の致命率はもっと下がっていくだろう」と見通しを語りました。