ジョブズは、アップル自社製チップM1の夢を見たか?
そして、製品版として発売されたM1もA14 Bionicに近い技術を持って作られている。A14 BionicはCPUに2個の高性能コア、4個の高効率コアを搭載し、4個のGPU、16個のニューラルエンジンを搭載しているが、M1はCPUに4個の高性能コア、4個の高効率コアを搭載し、8個のGPU、16個のニューラルエンジンを搭載している。
M1はMacのために専用のデザインとアーキテクチャーを持って新規で設計されているとはいうが、それでもAシリーズチップという土台の上にあり、A14 Bionicと強い関係性があることは言うまでもない。
P.A. Semiは脱インテルのための投資だったか?
というわけで、2007年のiPhone、2008年に買収したP.A. Semiの設計するARMチップの直系の子孫がM1チップであることはご理解いただけたと思う。 しかし、そうなると当然ひとつの疑問が浮かび上がってくる。 2005年にインテルという『敵の血』を輸血して生き延びたアップルだが、2008年にP.A. Semiを買った時、ジョブズはそこで作る自社製チップセットで捲土重来することを夢見ていたのだろうか?
黎明期のApple IIのMOS 6502に始まり、初期MacのMC68000、後の3社連合によるPowerPC、その後のインテルCPUと、コンピュータの根幹であるCPUの開発を他社に委ねている限り、その動向に大きく翻弄されることは避けられない。 そういう意味では、自社の運命の舵を自分で握るために、チップセットを自社製とすることはアップル創業時からの悲願だったとしても不思議はない。 M1チップをMacに搭載する未来を予見して、2008年にジョブズがP.A. Semiを買っていたのだとしたら、それはまさに神の目を持った企業戦略と言うしかない。後から展望するから、そう思うだけなのかもしれないが。